バースデーパーティーで完敗(6/28 柏戦)
先週土曜(6/28)はホーム・アイスタ日本平での柏戦でした。で、その翌週の7/4がエスパルスが初めて対外有料試合を開催した日という事で、この試合でエスパルスの誕生日を祝うべく様々なイベントが行われました。西サイドスタンドには歴代ユニフォームが展示されたりして「バースデーパーティー」を盛り上げようとし、そのせいなのかアイスタ日本平では今季最多の1万8千人の観客が訪れました。
が、試合は0-2で敗戦。内容的にも「かなり差があるなぁ」と思わされた試合で、エスパルスの誕生日を盛り上げようとしたクラブ関係者やサポーターにとっては残念な結果となりました。
<明治安田J1リーグ 於 IAIスタジアム日本平>
清水エスパルス 0ー2 柏レイソル
1.エスパルスのスタメン
SUB:猪越、羽田、中原、斎藤、矢島、大畑、嶋本、小竹、千葉
最初にスタメンを見て驚いたのが、右WBに特別指定の日高が抜擢されていた事。前の試合で山原も怪我をしていたみたいで、その影響のようです。高橋も当然欠場で代わって住吉が3バックの真ん中に入りました。それ以外のスタメンは前節と同じですが、サブに日高と同じ特別指定の大畑が入るなど全体的に若いメンバーが多く、台所事情の厳しさを感じました。
2.柏の戦い方
昨季17位に終わった柏ですが、監督にリカルド ロドリゲス氏を招聘し、補強に関してもロドリゲス氏のサッカーを知っている小泉や渡井、早く馴染みそうな小島、原田らを獲得。チーム始動後のトレーニングでロドリゲス監督流のポジショナルプレーに基付くサッカーを浸透させ、開幕戦から4試合負け無しと好調なスタートを見せました。その後第5節から4試合勝ち無しになったものの、第9節から第16節まで負け無しと安定した成績を記録し、第21節時点で首位から勝ち点3差で2位につけています。
システムは3-4-2-1。ただボール保持(攻撃)時は3バックの外側も積極的に上がってきて、両サイドから分厚い攻撃を仕掛けてきます。ボール保持率はJ1でダントツの1位ですが、一方でカウンターによるゴールも多く、攻撃のバリエーションが豊富です。失点もリーグで4番目に少なく、穴の少ないチームなので、厳しい戦いが予想されていました。
3.試合経過
立ち上がりは両チームとも相手陣へ攻め込む場面を作り、中盤での潰し合いも非常に激しかったので、好試合になるかも、という予感がありっました。しかし8分、エスパから見て右サイドで蓮川にボールを奪われたのを即座に奪い返した垣田から始まり、ポケットに侵入した小屋松からのクロスを最終的に久保がシュート。これがブルネッティに当たって沖が取れない高さとなってゴールへ吸い込まれ、柏が先制します。これで勢いを得た柏が空いたスペースを後ろの選手がどんどん使っていて分厚い攻めを見せ、エスパは防戦一方となります。それでもギリギリのところで追加点は許しませんでしたが、23分、またも右サイドの小屋松からのクロスにボランチの戸嶋が上手く合わせて2点目。エスパは前半半分終えたばかりで2点ビハインドとなってしまいました。これで目が覚めたのか、エスパもより前でボールを奪おうという姿勢を見せ、それとともに相手陣へボールを運ぶ時間帯も増えましたが、決定機を作るまでには至らず、前半は0-2で折り返しました。
ハーフタイムで柏の選手をどう捕まえるか等について指示を受け、エスパは後半開始から積極的な攻撃でペースを掴み、46分の北川、47分のカピシャーバのクロスを北川が合わせようとした場面、48分のクロスからの日高のシュートと立て続けに決定機を作ります。61分50秒頃にはCKから住吉がこぼれ球をゴールに押し込もうとしますが、ギリギリのところでGK小島にかき出されて得点ならず。72分50秒頃にはCKの際柏にハンドがあったとしてPKが与えられましたが、北川のシュートは小島に防がれてまたも得点ならず。ATにはペナ前からやや後ろの地点でのFKを中原が直接狙いますが、ポストに当たってこれも得点なし。結局、エスパルスは0-2で敗れ、クラブ創設33周年を勝利で飾る事は出来ませんでした。
4.前半に柏が圧倒した要因
バースデーパーティとして祝うつもりがそうならなかったのは残念です。ただ、柏は強かったですね。特に前半に関しては、やっているサッカーの質の差を強く感じました。ただ後半エスパがどうにか盛り返す事が出来たのも確かなので、前半柏が見せた強さと後半エスパが盛り返す事が出来た要因について書いていこうと思います。
前述した通り、柏の基本システムは3-4-2-1。で、ボール保持時は両WBが1トップと同じラインにまで上がってきます。エスパは、中盤でブロックを組む時はどちらかのWB(この試合の場合はカピシャーバ)がボランチのラインまで上がる事で4-4-2気味にするのですが、対面のWBが上がってきている以上それに対応して最終ラインまで下がらざるを得ません。これによりエスパは5-2-3もしくは5-3-2で守る事になりますが、そうなると中盤で数的不利になって、特にブエノ、宇野が広大なエリアを守らないといけなくなるし、柏の中盤および2シャドウの選手達にしたらスペースがあるので中間ポジションをとりやすくなります。で、中間ポジションに入った選手が上手くボールを引き出して前進させてきます。加えて前半は1トップの垣田のポストプレーを殆ど阻止できなかったので、エスパとしては自陣にリトリートせざるを得ませんでした。
リトリートしてスペースを埋めた事で守れるかというとそんな事はありませんでした。柏は3バックですが、前述した通り3バックの左右にいる原田と三丸がまるでSBのように上がってきて、WBの小屋松、久保、シャドウの小泉、渡井と連携し、サイドで数的優位を作った上で更にエスパ守備組織を攻略しようとしてきます。エスパの、特に3バック左右の蓮川、ブルネッティにしたらシャドウと本来CBの選手のどちらについたら良いかわからないわけです。前の選手にしても、柏は両CBが上がった時はボランチの戸嶋、中川のどちらかが下がってバランスをとっているし、それ以前に後ろが大混乱になっているから前プレしようにも出来ないわけです。特に先制点をとられてから2失点目を食らうまでは、柏の勢いが増した上に自分達も多少なりともメンタル的に落ちていたでしょうから、余計に混乱をきたしていたでしょう。
で、柏の強さはこうしたポジション取りの上手さだけではなく、味方にスペースを与えるために動いて実際にスペースが出来ると、周りの選手がちゃんとそれを使うという意識が共有されている事にあると思います。特に垣田の動きに呼応しての後ろの選手達の動きにそれが見られていて、垣田がウラに抜け出そうと動いてウチの最終ラインもそれに合わせて下がると、出来上がったスペースをシャドウの小泉、渡井が侵入して後ろからのパスを引き出すわけです。それはサイドをとってから更にポケットをとる時も同じで、シャドウの選手がポケットに走りこんだら、WBがカットインしてシャドウの選手がいたスペースを使うとかそうした崩しが淀みなく出来ていて、「そりゃ優勝争いしているはずだ」と思いました。尤も、このサッカーって秋葉監督が本来やりたいサッカーだと思うんですよ。ポジショナルプレーの部分はともかくとして。だから秋葉監督としたら余計に忸怩たるものがあるんじゃないかなと思います。わかりませんけどね。
5.後半盛り返す事が出来た要因
ちょっと柏の話が長くなっちゃいましたね(汗。ここからはエスパルスについてです。前半、特に25分頃まではやられたい放題だったわけですが、2失点目を喫してからの選手間の話し合いで「もっと前に出よう」という意識を共有した事と、ハーフタイムで誰が誰を見るかを明確にした事で、後半は盛り返す事が出来ました。具体的には蓮川、ブルネッティはシャドウの渡井、小泉を見る事、そして住吉はこれまで以上に垣田を自由にさせないという徹底させた事がまず1つ。そうやって後ろの役割を整理した上で、前の北川、乾、松崎は相手3バックの古賀、原田、三丸への前プレの圧力を強める事も指示されたと思います。あとはボールを持ったら1人1人が仕掛けて対面の選手を剥がす事も指示されたでしょう。
これによってエスパはペースを握る事が出来ました。ボール非保持時は前の3人が柏の3バックに前プレをかける事でパスの出し先を探す余裕を少なくし、垣田にボールを入れてきた時は住吉が厳しく対応して起点にさせませんでした。押し込められても3バックと両WBが相手にマンマーク気味に対応して動きを封じ、原田、三丸に対しても乾、松崎が対応する事で前半ほどは決定機を作らせなくする事が出来ていました。
ボールを持った時に、目立ったのはカピシャーバですね。彼が前に相手選手がいようが構わず突破していく事がエスパの一番の武器になっていたと思います。そうやって押し込む事が出来ればそう簡単にはボールを奪われないですし、奪われたとしても全体がコンパクトな状態を作れているので、すぐさまプレスをかけて相手の動きを限定し、最終的にボールを回収する事が出来ます。奪いきれずに柏にボールを持ち出されるシーンもありましたが、後半のエスパのボール保持率は50%を超えシュート数でも上回った事を見てもエスパが優勢に試合を進める事が出来たと言えるでしょう。
ただ、そのわりに流れの中からの決定機が少なかったのも事実です。要因としては、右サイドの機能不全があげられるでしょう。日高はこれがJリーグデビュー戦ですし、小竹のスピードは武器ですがスピードだけで相手を崩せるかというと難しいですからね。それによりカピシャーバ一人に頼らざるを得なかったですし、いくらカピシャーバの馬力が凄いと言っても何回も見せられたら相手も対策をとれますし、何より後ろに下がってスペースを埋められると厳しいですよね。もう1つの要因は前節と同じで、相手に引かれた時の崩し方がまだ不十分な事です。このあたりは柏と比べると見えてくるものがあります。前述した通り柏は味方の選手が作ったスペースを周りの選手達が使うというのが共有されてますが、エスパの方はそうした意識がまだ不足していると思います。誰かがポケットに走り出して相手選手をつり出したのに、それにより生まれたスペースを使って崩すという発想が柏の選手達と比べると欠けています。だから相手にスペースを埋められると詰まってしまい、結局乾や松崎、カピシャーバといった個人で打開できる選手が頑張るしかなくなっているんじゃないかと。それでもJ2なら相手選手を剥がす事が出来ていたけど、J1レベル相手となるとなかなか上手くいっていないというのが現状かなと感じますね。
そうやって考えていくと、就任して半年たつかたたないかくらいで柏の選手達にスペースをいかに作りいかに使うかを浸透させたリカルド ロドリゲス監督は凄いと思いますし、逆に就任して2年以上たつのに相手が5枚でブロックを組んできた時の崩し方をチームに落とし込めない秋葉監督にはどうしても物足りなさを感じます。数年先にタイトルを獲りたいのであれば尚更。ただ、ハーフタイムに戦い方を整理して選手達に授ける事で戦況を打開したのも秋葉監督なんですよね。出来れば現ドイツ代表監督のナーゲルスマンみたく前半早い段階で修正をかけて欲しかったところですが、簡単にはいきませんから。またいろいろな言葉を駆使して選手達のメンタルを刺激する事も上手いので、これまでのようにチーム全体がネガティブな方向にいかないようになっています。現時点ではそうした秋葉監督の優れているところが上手く作用する事を祈るばかりです。
6.まとめ
これで6月は未勝利。5月と合わせても9試合でわずか1勝と、厳しい状態が続いています。この状態で町田としかもアウェイで戦わないといけないというのは辛いところです。ただ泣き言ばかりは言っていられません。幸い今週から練習に合流した選手もいるようですし、この試合を終えるとE-1選手権の関係で2週間ほど空くので、更にけが人が戻ってくる可能性もありますし、疲労を回復させた後でじっくりと戦い方の修正に時間をとる事が出来ます。良い雰囲気でこの中断期間に臨むためにも、何とかアウェイで勝ち点を積み上げて帰ってきて欲しいです。
※ブログランキング参加中です。
| 固定リンク
コメント