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2025年5月28日 (水)

熱戦制す(5/25 神戸戦)

 先週末(5/25)はホーム・アイスタ日本平での神戸戦でした。先週の中頃くらいの天気予報はあまり良くなかったのですが、当日は雨は早い時間にあがってあまり雨の心配がない感じになり、試合が進むにつれて晴れ間が増えて日差しが強くなってきたため、暑いとすら感じました。

 試合は序盤から激しい攻め合いになり、その中で2点リードで進める事が出来ましたが、さすがはJ1二連覇中にチーム。最後まで諦める事なく攻めてきて、ATに入る頃に1点を返してきて、その後もかなり冷や汗をかかされました。それだけに試合終了のホイッスルが鳴った時の嬉しさは格別でしたし、両チームとも持ち味を存分に出してきた見応えのある熱戦を生観戦出来て、しかも勝つ事が出来たのは良かったです。

<明治安田J1リーグ 於 IAIスタジアム日本平>

 エスパルス 3ー2 ヴィッセル神戸

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1.エスパルスのスタメン

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 SUB:猪越、蓮川、北爪、小塚、中原、弓場、矢島、西原、土居

 蓮川に代わって高橋がスタメンに入りました。恐らく大迫に対する対策だったと思います。それ以外のスタメンは前節と同じだったのですが、試合が始まってみるとSBの左右がいつもと逆で、山原が右、高木が左に入りました。これも神戸戦に備えての対応だったみたいで、これについては後述します。リザーブメンバーは基本的にはいつものメンバーなのですが、ユースの土居が抜擢されました。どうもアフメドフ、タンキの2人とも怪我で離脱中みたいで、現在はFWの怪我に悩まされているようです。

2.神戸の戦い方

 昨季、J1二連覇を果たした神戸。オフには山口蛍を引き抜かれてしまったもののそれ以外の主力はほぼ残留し、今シーズンも有力な優勝候補と見なされています。ただ大迫と武藤が怪我で出遅れてしまい、その影響からか開幕から4戦勝ち無しとスタートダッシュに失敗。その後も波に乗り切れない状態でしたが、第10節から4連勝。第15~16節と連敗しましたが、直近の2試合は連勝しています。昨季リーグMVPの武藤が怪我で長期離脱となってしまったものの代役としてエリキを獲得し、更に大迫もスタメンに復帰しており、追い上げ体制を整えてきていると言っていいでしょう。

 システムは4-3-3。まず大迫にボールを当ててセカンドボールを回収して相手を押し込んで両サイドから揺さぶっていき、ボールを奪われてもカウンタープレスで素早くボールを回収して二次・三次攻撃を仕掛けて相手を攻め倒すというのが基本スタイルです。セットプレーからの得点が多いのも特徴で、昨季は全得点の約4割、今季も4割以上がセットプレーからのものです。実際、扇原、井手口と精度の高いプレースキッカーがいますからね。ただ何よりも大迫のポストプレーをどう封じるか、更にはそれによるセカンドボールの回収で上回る事が出来るかがこの試合の大きなポイントでした。

3.試合経過(前半)

 立ち上がりは風上に立った神戸が攻勢に出ます。最終ラインから大迫や佐々木へロングボールを入れてセカンドボールを回収し、3トップに加えてインサイドハーフの宮代も上がって4トップのような形となり、そこへ右SBの酒井も上がってきて前に人数をかけて圧力をかけてきます。それに対してエスパはカピシャーバを酒井にマンマーク気味につけたのですが、そうなると酒井が上がった場合は5バック気味になるため、ボールを奪っても前への繋ぎ先がなかなか見つからず、しかもすぐ4トップと井手口、扇原がカウンタープレスに来るためなかなかボールを前に進める事が出来ず、3分、7分、9分と危ないシュートを撃たれてしまいます。しかし10分頃にブエノから乾へのパスを起点とした攻め上がりからカピシャーバのヘッドに至った場面からボールを前に運べるようになります。そして15分、相手陣でのエリキから前へのパスをブエノがカットして、左サイドのウラへ走り出した乾へ浮き球のパス。これを受けた乾が酒井を股抜きで剥がしてニアに走り出した北川へパス。北川がこれをGK前川の前でゴールへ流し込んでゴール。ブエノ、乾、北川の3人が個の技術の高さを見せた見事なゴールでエスパが待望の先制点を奪いました。

 これで勢いの出たエスパはボールを握る時間を増やしていきます。ボール保持(攻撃)時は巧みなパスワークで素早くボールを前に運んで両サイドから揺さぶりをかけ、ボール非保持(守備)時は前から圧力をかけて容易に蹴らせないようにし、前に長いボールを入れられても高橋、住吉、高木が粘り強く対応してはね返し、試合を優位に進めます。そして24分、乾のクロスがはじかれて得たCKから高木がドンピシャであわせて、エスパが2点目を奪いました。高木のヘッドも松崎のCKも見事でしたが、高橋が神戸のゾーンディフェンスの真ん中に鋭く侵入する事で相手DFの意識を自分に向けさせたのも効きました。この後は神戸が再び攻勢をかけ、42分頃の酒井のカットインしてのシュートなどの危ない場面を作られましたがゴールまでには至らず、2-0で前半を折り返しました。

4.試合経過(後半)

 後半、神戸は開始からエリキと佐々木に代えてパトリッキと井出を投入。宮代を3トップに上げて3トップの面子を入れ替え、大迫がロングボールを受ける位置を左右どちらかに変えたりして何とかエスパの守備組織をかく乱しようとしますが、逆にカピシャーバがドリブル突破してファウルを受けて直接FK。このボールに北川が反応してゴールに吸い込まれましたがオフサイドの判定。VARチェックでも覆る事はなく3点目はなりませんでした。この後は早く1点返したい神戸にボールを握られる時間が長くなりますが、前半と違って風下でボールが戻ってしまうため思うように前で起点が作れないため、神戸もグラウンダーのパスを繋いでエスパの陣形の穴を探るようになりますが、ゴール前に迫る事が出来ません。しかし辛抱強くパスを繋いでのスローインから酒井に危ないシュートを撃たれ(カピシャーバがブロック)、何とかCKに逃れたものの、そのCKから宮代にどフリーでのヘッドを決められ、1点差とされてしまいます。

 これにより神戸の攻撃の勢いが更に強まる可能性もありましたが、この日のエスパルスの選手達は落ち着いていました。失点後のキックオフ直後から神戸陣内に攻め込んで逆に追加点をとる意思を示し、58分には宇野に代えて弓場を入れて中盤の運動量を増やし、その後もボールをじっくり繋ぎながら両サイドから揺さぶりをかけていきます。70分20秒の乾のスルーパスからの北川のシュートは前川にはじかれてしまいましたが、それで得たCKからまたも高木が足で合わせて3点目。エスパが再び2点リードとなりました。その後は神戸が選手交代でフレッシュな選手を入れる事で何とか同点に追い付こうとしてボールを握る時間を増やしていきますが、エスパは落ち着いて対応出来ていました。しかし90+1分、ロングスローのこぼれ球を回収されてからのクロスを宮代がヘッドで押し込んで1点差となります。これで神戸が勢いを取り戻し、90+2分のパトリッキ、90+6分の宮代と際どいシュートを放ちますが、エスパも身体を張ってゴールを守り抜き、結局3-2でエスパルスが神戸を下し、5試合ぶりの勝利をあげました。

5.勝因

 僕らとしたら最後までヒヤヒヤする展開の試合でしたが、中立の立場から見たら目の離せない熱戦だったのではないかと思います。両チームとも「ボールを奪ったら早めにボールを前に運び、相手ゴール前で勝負する」というサッカーを志向していると思うのですが、前へのボールの運び方は対照的で、エスパは基本的にグラウンダーのパスを繋いで運んでいくのに対し、神戸は長いボールを大迫や佐々木に当ててセカンドボールを回収して相手を押し込んでいくというやり方で、そういうサッカーの違いも楽しむ事の出来る試合でした。

 そんな試合を制する事が出来たわけですが、勝因としては以下の項目があげられるかなと思います。

①神戸に対する対策がハマった

 いつになく神戸に対する対策を多く施しているなというのが見てとれる試合だったと思います。まずスタメンに高橋を入れた事。まあ柏戦まではずっとスタメンだったので単に復帰しただけともとれるのですが、やはり大迫を意識しての起用だろうなというのは容易に想像できました。あとはSBの左右をいつもと入れ替えて、右に山原、左に高木を入れてきました。これはやはり相手の右ウィングのエリキを警戒しての変更だと思います。ただ、単純にエリキに高木を付けてマークさせるだけではなくて、カピシャーバに左サイドの攻撃を任せて高木はその後ろでフォローする役を担う事でエリキにウラのスペースを与えないようにしたんじゃないかなと思います。勿論山原もゲームプランに合わせて攻撃を自重する事も出来るでしょうけど、やはり山原の持ち味は攻撃時の攻め上がりですからね。だったらその持ち味を右で発揮してもらおうという考えだったんじゃないかと思います。

 この起用がハマりました。高橋は住吉と共に大迫や佐々木へのロングボールを撥ね返し続け、高木もカバーに入る事で神戸に思った通りの攻撃をさせませんでした。最終ラインの上げ下げも高橋を中心としてこまめに上げ下げする事でコンパクトなブロックを維持。これによりエリキが動き回るスペースを消し、更に攻撃時は左サイドの攻略がメインとなり、カピシャーバ、乾、ブエノが盛んに左サイドを攻める事でエリキを守備に奔走させる事にも成功。前半終了間際のエリキは結構苛立っていたと思いますが、なかなか自分の持ち味を出せなかった事の表れだと思います。その左サイド攻略が結実したのが先制点なわけですが、あれはブエノの守備とパス出しの能力の高さ、乾がブエノがパスカットした時すぐにウラへ走り出したトランジションの早さとアイディア、北川の動き出しの早さとGKの鼻先でボールをゴールへ流し込む能力といったそれぞれの良さが出た素晴らしいゴールでした。特に乾が酒井を股抜きでかわして山川の股下を通すパスを出すアイディアとそれをやってのける能力は凄いですね。

②用意したセットプレーから2点とれた

 2つ目はこれですね。大迫に対する対策としての高橋起用が攻撃面でもハマりました。24分、72分ともに松崎のCKから高木がファーサイドに入ってゴールを奪ったわけですが、両方とも高橋が真ん中に走りこんできています。神戸はCKの時はゾーンで守っていますが、そうは言っても長身の高橋が勢いを持って走りこんできたら、やはり相手選手としてはそちらに意識がいきますよね。実際、24分の時はトゥーレルが高橋に寄せにいってその分高木が入り込むスペースが出来てましたし、72分の時は山川が寄せにいっているし、トゥーレルの視線も高橋の方にいっていて高木を見てませんでした。酒井が気付いてゴールカバーに入ったのですが間に合いませんでしたね。

 攻撃時のCKのデザインは依田コーチと上野コーチがいろいろ考えておられるみたいですが、神戸のゾーンディフェンスの穴を突く見事なデザインでした。勿論、精度の高いボールを入れた松崎、おとりとして完璧な役回りをした高橋、頭と足で2点を叩き込んだ高木もお見事でしたね。

③ゴールへの入り方などを工夫した

 これは対神戸対策というよりもこれまでの課題に対する対応になると思いますが、これまでのエスパはアタッキングサードに入ってからの崩しに課題がありました。鹿島戦では崩すところまではある程度できるようになったのですが、フィニッシュの精度に課題が残りました。これを受けてこの試合ではサイドでボールを持った時のペナ内への入り方に、工夫というか意識付けがされているように思いました。クロスが入りそうな場面では1人がニアに入って、1~2人がファーに入って、更に1人が少し後ろに立ってマイナスのクロスを待つ、みたいな感じで、クロスに対しての入り方に関して認識の共有がされていたように感じました。それにより少なくともみんなファーにいっちゃって誰もニアにいかないみたいな場面はなくなっていたと思いますし、北川がニアでフリックしてファーに走りこんでいたカピシャーバにシュートを撃たせようとする工夫も見られました。これも前節課題となったフィニッシュの精度を上げるための対策の1つだと思うので、これがより定着していけば得点も増えていくのではないかと思います。

 僕が考えたのは以上の3つです。いずれも鹿島戦での悔しい敗戦を受けて、何としてもこの試合に勝ちたいと考えて、いろいろ策を講じたのが実ったと言えるもので、その意味で価値のある勝利だったと思います。

6.反省点

 とはいえ反省すべき点がなかったわけではありません。反省点は以下の2点になるかなと思います。

①2失点した事

 勝てたから良かったようなものの2失点してしまったのは良くないですよね。まず1失点目は、確かに井手口のボールも宮代のヘッドも見事なでした。更に神戸もウチのゾーンの穴を広げる工夫をしていて、まず井出が高橋の傍に立ってピン留めするような役割をし、大迫もボールが入ろうとする時に後ろに動く事で住吉の注意をそらしているんですよね。それによって住吉の対応が遅れたように見えました。だから神戸が見事ではあったのですが、シロートなりに修正点をあげるとすると、住吉は大迫に気をとられる事なくボールと前の高橋との距離を埋める事に集中すべきだったし、高橋も井出に気を回すのではなくボールに集中すべきだったかなとは思います。

 2失点目は、セカンドボールの回収で北爪が山川に競り負けたのが痛かったですね。本多にボールに渡った時点で弓場が近くにいたけど汰木も同サイドにいたので寄せるのは困難な状態でした。で、フリーで本多にクロスに入れられたわけですが、その時点で高橋と高木の間に宮代とパトリッキの2人が入ってきていたので、ポジション取りのところで負けてしまったのが失点の原因かなと思います。繰り返すと、セカンドボールの回収のところとクロスが入ろうとしている時点で相手選手を捕まえられてなかったところが反省点ですかね。あとはその前のところで土居がもっとはっきりとクリアしていれば、というところですが、ちょうど鍬先がシュートしようとしたのをブロックした感じだったので、あれが精一杯でしょうね。

②5バックでリトリートしてボールを奪った時の対応

 これは以前からの継続課題なのですが、試合開始早々は神戸に押し込まれたためにカピシャーバが左WBに入って5バック気味で守っていたのですが、そうなると何とかボールを奪っても前の人数が少ないのでなかなかボールを前に出せない状態が続きました。結局ボールを相手陣まで運ぶまでに10分ほどかかってしまいました。この現象は以前から続いているので、5バック状態になってもボールを素早く前に出せるようにする仕組みが欲しいところです。

 ただこの試合ではその一端が見られました。ボールを奪った時に、前で乾と北川がタテ並びになって、そこにボールを入れて2人の連携で前を向くシーンが何回か見られました。そうやって中盤までボールを持ち出せば簡単にはボールを奪われずにボールをアタッキングサードまで持っていけるようになっているので、この試合で見られた工夫の一端が形になってくれば、と思います。

7.まとめ

 やはり5試合ぶりの勝利の味は格別でしたね。勝敗を五分に戻せましたし。次が前半戦最後の試合、アウェイでのC大阪戦です。C大阪も好調ですし、とにかくアウェイでのC大阪戦は鬼門なので勝つのは大変ですが、ウチもこれまで積み上げてきたものがありますから、それを思い切りぶつける事で何とか勝ち点を積み上げて欲しいです。

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