両GKが素晴らしかった試合(3/2 岡山戦)
日曜(3/2)はアウェーでの岡山戦でした。日程が発表された時行こうかどうしようかと考えたのですが、昨季も行っている事と次節もアウェーでのG大阪戦で、今回はそちらに行きたいなという気持ちが勝ったので今回は行きませんでした(お財布の問題もありますしね(汗)。でも前日の土曜から多くのエスパサポが行かれたみたいで、僕のXのTLがその話題で溢れていて、「かきおこ!」とか「えびめし!」といった昨季は食べなかった岡山の食べ物の写真を見るとつい羨ましくなっちゃいました(汗。
試合は1-1のドロー。アウェーでの試合なので勝ち点1を持ち帰る事が出来たのは悪い事ではないのですが、前節に続いて先制しながら追いつかれてのドローなので、評価が難しいですね。だから「痛み分け」という評価が正しいかもしれません。ただこの試合での岡山のGKのブローダーセンのプレーが素晴らしくて、彼に勝ち点2を持っていかれた感じも強いんですよね。一方で岡山サポにしたら沖が壁に見えたかもしれないと思うので、ここはブローダーセンと沖が素晴らしかったと称えるべき試合というのが一番正しいような気がしてます。
<明治安田J1リーグ 於 JFE晴れの国スタジアム>
清水エスパルス 1ー1 ファジアーノ岡山
1.エスパルスのスタメン
SUB:梅田、高橋、北爪、宮本、小塚、嶋本、西原、アフメド アフメドフ、ドウグラス タンキ
岡山も前節の広島と同様に3-4-2-1のシステムなので、基本形は同じ3-4-2-1で臨みました。スタメンは、右WBは恐らく疲労を考慮して北爪の代わりに吉田を入れました。シャドウには前節キレキレだった松崎ではなく中原を起用。松崎はリザーブにも入っていないので心配ですね。これに伴いサブには開幕戦以来となる嶋本を入れて来ました。
2.岡山の戦い方
昨季J2を5位でフィニッシュして昇格プレーオフに参戦し、初戦で山形、決勝で仙台をともにクリーンシートで破ってクラブ史上初のJ1昇格を決めた岡山。「自分達の町のクラブが初めてJ1に上がった!」という事で街がかなり盛り上がったみたいで、その証拠にシーズンチケットは完売。ホーム開幕戦や前節のG大阪戦のチケットも完売したとの事で、さながらJリーグ開幕初年度のような盛り上がりを見せているそうです。チームもその期待に応えて、ホーム開幕戦は京都相手に2-0で勝利。続くアウェーでの横浜FC戦は敗れたものの、前節のホームでのG大阪戦は2-0で快勝と上々の滑り出しを見せています。
木山監督が続投し主力選手の大半が残留したという事で、戦い方は昨季と同じ。システムは3-4-2-1で、後ろからボールを繋ぐよりは早めに前にボールを送ってそこで起点を作り、全体を押し上げて5トップ気味にして両サイドからの攻撃を主体に攻め込んできて、ボールをロストしても素早いトランジションで出来るだけ前でボールを奪って二次・三次攻撃を仕掛けるというのが基本的な戦い方と認識しています。ウチは昨季岡山相手に2勝しましたが、最後に当たったのが6月末なのでそこからこの戦い方を磨いてきたと思いますし、実際昇格プレーオフの山形戦、仙台戦では相手を押し込んで窒息させそうな戦いを見せていたので、警戒しなければと思っていました。
が、実際に戦ってみるとやはり押し込まれる時間が長くなりましたね。特に前半は。理由の1つは1トップに一美を入れてきた事にあるかなと思います。昨季対戦した時の1トップはいずれも身体能力の高さで起点を作ろうとするタイプでしたが、最初にアウェーで対戦した時の1トップだったグレイソンは高橋が、アイスタで対戦した時の1トップだったルカオは高木がいずれも抑えていたので、それほど前で起点を作られる事はありませんでした。が、一美はウラに抜け出したりサイドへ流れたりして起点を作るタイプなので捕まえにくいですし、更に一美が流れて開けたスペースで江坂や岩渕が受ける形もあるので、昨季よりも相手の起点作りを抑えるのに苦労してしまった印象があります。
3.途中から岡山に上回られた前半
前述した通り、この試合でのエスパの基本システムは3-4-2-1でした。これは岡山がボールを持った時に5トップ気味にくるのに対応し、前から嵌める際も誰が誰を見るのかを明確にする事で嵌めやすくする事だったと思います。が、エスパがボールを保持した時はその制約はなくなります。そこでエスパはボールを保持じた時は下図のように4バック気味にしてきました。
高木を左SBにスライドさせて山原をサイドハーフに上げる形をとりました。昨季のアウェーでの群馬戦や国立での横浜FC戦などで使ったやり方ですが、原テルがいなくなった今季もこのやり方が使えるのは高木がいてくれるおかげですね。狙いは岡山とシステム上ミスマッチにする事で相手のWBのウラとかを突いていく等攻撃しやすくする事だったと思います。このやり方は開始15分までは効果がありました。特に左サイドで高木が結構上がってくるし山原も前にいるので、岡山としては誰がどう捕まえるのかで混乱し、それによりブロックを思うように上げられず、その合間を突いてエスパに乾を中心でボールを前に運ぶのをなかなか防ぐ事が出来ませんでした。ただエスパの方もアタッキングサードまでは入れるのですが、岡山の5-4のブロックを前にして攻めあぐねる状態が続き、14分の神谷からボールを奪っての北川のシュート以外は目立ったチャンスを作れません。
そして16分頃に岡山が住吉からのタテパスをカットしてそのボールを岩渕が持ち出してエスパ陣内に運んだあたりから、岡山がボールを握る時間帯が長くなっていきました。自陣に押し込まれた時のエスパが5-4-1で守るのは前節の広島戦と同じなのですが、岡山が最終ラインでボールを持った時は前節ほどは前プレはかけず、それよりも真ん中をしっかりと締めてタテパスを入れさせないやり方をとりました。それは岡山が後ろから繋ぐよりもまずは前に当ててセカンドボールを拾って攻めてくるのが基本なので、変に前プレをかけてブロック全体が間延びして相手にセカンドボールを拾われやすくするのを嫌がったからだと思います。そのやり方はある程度効果があったと思いますが、それで岡山に攻め手がなくなる事はなく、19分頃にハーフスペースレーンに入った松本に藤田がタテパスを入れてきたり、サイドに付けて外回しで攻めるふりをしてダイレで内側に返してそこから斜めのタテパスを入れてきたり、同じくサイドに付けてその内側を誰かが走ってこちらの陣形を崩そうとしたりと、あの手この手でエスパ守備陣を揺さぶってきます。それに対して何とか最後のところでやらせずにいましたが、何とかボールを奪って攻めようとしても、リトリートした陣形、つまり岡山と同じ陣形になっているので、ネガトラの早い岡山に容易に捕まえられてしまいます。何とか持ち出して26分のCKの宇野のシュートに結び付けたりしましたが、前半最初の頃のように足元のパスでつなぐのは難しくなってしまっているため相手陣のアタッキングサードまで持ち出すのは数えるほどで、29分頃には江坂、42分には岩渕に危険なシュートを撃たれてしまいます。ただ最終ラインが集中して対応してくれたため、何とかスコアレスで前半を折り返す事が出来ました。
4.お互いに最後まで勝利を目指した後半
後半、エスパルスは開始から右WBを吉田から北爪に代えてきました。岡山守備陣を攻略する際の狙い目が両WBのウラである事から右サイドの推進力をあげようとしたのだと思います。それとともに最終ラインでボールを持った時は早めに両サイドのウラへ長いボールを入れて、それに合わせて北爪、山原の両WBが上がる場面が何度かありました。これにより岡山の前からのプレスを回避しようとしました。一方で非保持時に、前半は相手の勢いに押されてボランチが最終ラインに吸収されてしまう時があったのを修正し、出来るだけ中盤のラインを維持させるようにしました。こうした修正により、エスパは後半開始直後こそキックオフから攻勢をかけてきた岡山に押し込まれたものの、次第にボールを持つ時間が増え、岡山を押し込めるようになりました。押し込んでからも岡山が5-4-1でエスパが4-2-3-1というシステム上のミスマッチをより活かしやすいサイドを狙うようになり、複数の選手の連係からポケットを攻略しようとしてきました。
それが実りかけたのが60分頃。左サイドで山原、高木、乾、宇野の4人でパス回しをした後、乾が山原へタテパス。山原がこれを後ろ向きで受けるフリをして反転してポケットに侵入し、ゴール前へクロス。これは田上に防がれましたが、それにより得たCKからの混戦の中で田上が住吉を倒したと判定され、エスパがPKを得ます。しかしキッカーの北川のPKはブローダーセンに防がれてしまいました。北川がPKを蹴るのを見るのは久しぶりで、思い出してみれば確かにこの試合と同じくGKと駆け引きしてタイミングを外して逆方向へ蹴るのが多かったとは思います。ただこの日のGKのブローダーセンは昨季もカルリーニョスのPKを止めていて、しかもカルリーニョスが駆け引きしてきてもギリギリまで動かずに蹴る方向を見定めて飛んで止めています。ブローダーセン自身も試合後のインタビューで昨季の事を覚えていたみたいですから、それを思えば北川、もそうなのですがチームとして対策不足だったね、と思います。
この場面はスタジアムが沸いたし、流れが岡山に傾きそうな予感がありました。ちょうどPKと判定された時に岡山がルカオと木村を入れてきてましたしね。ただそうはなりませんでした。PKを止められた1分後、蓮川が岡山の最終ラインへロングボール。これを田上がGKへヘッドで返そうとしたボールに北川が追いついてシュート。これはブローダーセンに防がれますが、そこで得たCKがファーサイドにこぼれかけましたが、これを拾った高木がクロスを入れ、どフリーの住吉がヘッドで押し込んで、エスパルスが待望の先制点をあげました。ちゃんとゴール前にポジションをとって慌てる事なくヘッドを決めた住吉は見事ですが、半分は高木のゴールですね。ボールを拾ってからあれだけすぐ反転して、しかも正確なクロスをあげるのは難しいですよ。またあのタイミングじゃないと岡山に守備陣形を整えられ、防がれていたと思います。本当に見事なクロスでした。
これで一気に流れがエスパに傾くかと思われましたが、岡山も黙っていません。エスパと同じくこちらの両サイドのウラで起点を作って早めにクロスを入れるなどして攻勢をかけてきます。そして75分、CKのボールを江坂がすらし、ファーサイドでどフリーだった木村がヘッドで押し込み、あっという間に同点に追いつきます。この後は岡山に勢いが出て、77分に左からのクロスを右WBに回っていた松本が決定的なシュートを放ちます。が、今度は沖がファインセーブして岡山に得点を許さず、逆にタンキ、西原などといった攻撃的な選手を投入して次第に流れを引き戻し、90+8分、北爪からのクロスはカットされたもののこぼれ球を拾った西原がDFをかわしてシュート。これも決定的と思われましたがまたもブローダーセンがセーブ。両チームが最後まで勝利を目指して戦った試合は、結局1-1のドローに終わりました。
5.課題と収穫
試合としては、前節に負けず劣らず緊張感のある好試合でした。特に両チームのGK、沖とブローダーセンの再三のファインセーブが更に試合を盛り上げていたと思います。
ただ、エスパ目線で考えると、2試合連続で先制しながら追いつかれてしまったので、やはり悔しいですね。それに今節は後半半ばでの先制点でしたから「いける!」と思いましたし。だから同点にされたのが残念なんですけど、決めるところを決めていれば、それで追加点をあげていればという思いはありますね。いくらブローダーセンが素晴らしかったとは言え。ただそもそも決定機自体がそれほど多くなかったのが遠因としてあるかなとも思います。特に前半はペナ内からシュートを撃ってませんから。最初の15分は約75%ものボール支配率なのに、岡山のブロックを前にして攻めあぐねてしまいました。宇野が26分に見せたウラへ飛び出す動きがもっとあれば違ったと思うのですが、それが殆どなかったですね。あとは押し込まれる時間が長過ぎました。いくら岡山が相手を押し込んだ時にボールロストしても素早いネガトラですぐボールを奪い返すのが得意といってもちょっと思うようにやらせ過ぎかな、と思います。後半の打開策と同じで両WBが相手のウラへ抜け出してそこへボールを送ればよかったかもしれません。ただ右の吉田はそもそもそういうタイプではないですし、左の山原も相手右WBが柳貴博がサイドの高い位置に張り出してそれに引っ張られていたので、こちらも難しかったかもしれません。なので、この試合みたいに5バック気味で守っている時に相手のネガトラからのプレスをどう剥がしていくかは、両サイドのウラ狙い以外の対策も必要かなと思います。
あとは2試合続けてCKから失点した事ですね。まあ江坂のすらしは上手かったですが、こちらがゾーンで守っている時の前のスペースはニアやファーと並んで泣き所なんですよね。前節も塩谷がゾーンの前でフリーでいましたし。ただ「泣き所だから」とばかり言ってられないので、どう防ぐかについては何らかの対策が必要だと思います。
ただ前半押され気味でシュート数もゴール期待値も岡山より少なかったのが、ハーフタイムの修正と選手交代で息を吹き返し、終わってみればゴール期待値では岡山を上回り、シュート数も1本少ないだけというところまで盛り返したのは評価できると思います。またゴール前で度々危ないシーンを作られながらも最後のところでは自由にやらせない守備が出来ていたのも良かったです。前の3試合もそうですが、誰かが抜かれそうになっても必ず他がカバー出来ているというのは非常に良いですね。そういう守り方が出来ているのが今季流れの中から失点していない事に繋がっていると思います。攻撃に関しても、前半はアタッキングサードに入ってからの崩しが物足りなかったですが、後半はチームとして押し込んでから更に相手のウラやポケットを狙うという意思統一を図って、その意図通りに仕掛けて先制点に繋げ、追いつかれても終盤は逆に岡山を自陣に押し込み続ける事が出来たのは良かったと思います。前半の反省を活かす事が出来たという事だと思うので。勿論後半にしても物足りないところはありますが、アウェー、それもJ1に初めて乗り込んで大盛り上がりの岡山で、ですから。勝てなかったのは残念ですが、良いところも結構あった試合だったと思います。
6.個々の選手についての雑感
まずあげたいのはGKの沖ですね。前半の江坂のシュートや岩渕との1対1、そして後半の松本のヘッドと危険なシュートをことごとく止めてくれました。また蓮川、住吉、高木の3人も良かったですね。ゴール前の壁となって、しかも3人で連携しながらピンチを防いでくれました。後半から投入された北爪も持ち味の積極的な上がりによって流れを引き寄せてくれました。彼もMOM候補だと思います。あと山原も、前半は前述したように右WBの柳貴博を見なければならなくてストレスがあったと思うのですが辛抱強く対応し、後半は北爪と同様に積極的な上がりで前半とは逆に柳貴博を押し下げる働きをしてくれました。目立ちませんが頑張っていたと思います。一方、PKを止められてしまった北川には批判的な声もちらほらあるかと思います。ただ半分はチーム、つまり監督、コーチ陣や分析担当の準備不足だと思いますし、その後気持ちを切り替えて66分に再び決定的なシュートを撃てたのは凄く良かったと思います。止められはしましたが、これにより得たCKから先制出来たわけですから。やはり大事なのは失敗してからの姿勢だと思いますね。
7.まとめ
前述したように2試合続けて先制しながら追いつかれたのは残念ですが、まだ負けていません。特に守備面は安定していると思います。次もアウェーでのG大阪戦。前節と同様に、あるいは前節以上に厳しい戦いになるかもしれませんが、この試合と同様に粘り強く対応して相手のスキを逃さないという戦いで、何とか勝ち点を持ち帰って欲しいと思います。
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