我慢強く戦っての勝利(11/3 いわき戦)
改めていわき戦のレビューを書きます。前日は静岡地方は相当な雨が降りましたが、試合当日にはすっかり上がって気温もちょうど良いサッカー観戦日和となりました。
で、この試合にあたっての僕の面持ちは基本的にはいつものリーグ戦という感じでした。前節の栃木戦は前日の夜なかなか寝付けなかったし当日もドキドキしながらスタジアムに向かいました。その前の山形戦もそんな感じでしたね。ただいわき戦に関しては勿論重要性は認識していたものの緊張感までは感じませんでした。でもゴール裏サポの方々はもの凄く気合が入っていたみたいで、ビジター席以外の全てを橙、青、白の三色に染めたコレオを企画・実行して下さいました。この企画力と実行力には頭が下がるばかりです。僕もせめてこの企画が成功するよう協力しなければと思って、選手の記念撮影が終わるまで白のシートを掲げ続けました。(それに夢中で写真を撮れませんでしたがw。)
<明治安田J2リーグ 於 IAIスタジアム日本平>
清水エスパルス 1ー0 いわきFC
1.エスパルスのスタメン
SUB:梅田、山原、宮本、成岡、乾、カルリーニョス ジュニオ、郡司
北川が前節の退場により残り試合に出場出来なくなったのでスタメンが代わる事はわかっていましたが、予想以上にガラッと入れ替えて来ました。権田、高橋が間に合わなかったみたいでGKと3バックは変更なしでボランチと左WBも同じですが、北川の代役にタンキを起用しただけでなく2シャドウも松崎と矢島に代えて来ました。この起用が乾、カルリーニョスのコンディションの問題なのかタンキとの相性を考慮してのものかはよくわからないです。ただ右WBも北爪でなく西澤を入れたのは、真ん中に長身のタンキがいるのだからそこに正確なボールを入れられる西澤の方が良いと判断したんじゃないかと思ってます。
2.いわきの戦い方
昨季初めてJ2に参戦し、18位となったいわき。オフには家泉、宮本、岩渕、有田といった主力をごっそり引き抜かれましたが、C大阪から西川、大迫、F東から大森、今治から照山などといった選手を加入させ、昨季からの主力である谷村、有馬、山下、石田らと融合させて、クラブ創設当初から行ってきた攻守にアグレッシブなサッカーをより先鋭化させたチームを作ってきました。開幕直後の2試合こそ勝てなかったものの、その後は第4節で熊本を4-0で破ったり第6節で横浜FC相手に2-2の撃ちあいを演じるなどしながら勝ち点を積み重ね、第14節時点で4位に躍進。第15節で山口に敗れて7位に後退したもののその後第34節までずっと7位もしくは8位という順位を維持してきました。岡山、水戸に連敗してプレーオフ進出の夢は断たれてしまったもののそれでモチベーションが低下するとは思えず、むしろウチ相手にいわきが今季やってきたサッカーがどこまで通じるかを試すべくチャレンジしてくるのは明らかでした。
基本システムは3-1-4-2。ボールを持ったらとにかく前に早く運んで、ゴール前に人数をかけて両サイドから仕掛ける形。特にこの試合ではこちらの3バックとWBの間にロングボールを入れて起点を作り、ボールキープ出来なくても前からプレスをかけてボールを奪ってショートカウンターを仕掛ける形を徹底してきて、そのスタイルに特に前半は苦しめられました。
3.いわきのプレスに苦しめられた前半
前節、栃木の前プレに苦しめられたり、その前に水戸と3バックで戦った時に後ろが重くなって前半思うように攻められなかった事などの反省を踏まえて、エスパはボール保持時の中盤の立ち位置を下記のような形にしてきました。
松崎を右、中村を左のボールの逃がし所にする事でボールをスムーズに前に運ぶ事を狙ったのだと思います。この2人を経由してボールを前に運ぶ場面は殆どなかったと思いますが(汗、いわきの当初のプレスの形を崩す事には成功したみたいで、エスパは5分に矢島のミドル、9分に西澤、松崎も絡んでのパス交換からの矢島のクロスをタンキがヘッドで合わせる惜しいシーンを作るなどの攻勢をかけました。しかしいわきも元々ウチのダブルボランチの所を狙うつもりだったのでしょう。11分に吉田からパスを受けた中村のボールを後ろからかっさらった柴田がフリーでシュートを放ったのを皮切りにエスパのビルドアップに圧力をかけ、更に15分頃に宇野のケガで試合が中断した時を使ってベンチからプレスのかけ方を指示。その直後の17分に吉田がプレスから逃げようとロングボールを蹴ろうとしたのを加瀬がカットしてこぼれ球を有馬がシュートするという危険な場面を作られ(沖が何とか触ってポストに弾かれた)、その流れからのスローインでいったんクリアしたのを跳ね返され、そのこぼれ球を山口にフリーでボレーシュートを撃たれるという決定機を作られてしまいます(住吉に当たってコースが変わりながらも沖がファインセーブ)。22分にもいわきのロングボールを住吉がクリアしたもののこぼれ球をコントロールしようとした宇野がボールを奪われて谷村にシュートを撃たれる場面も。エスパはいわきの前プレに対してミスが増えてボールを前に運べず、何とかセンターライン付近までボールを運んでもいわきにボールを奪われて再び3バックの両端にロングボールを送られるという苦しい時間が続きました。
これを受けてエスパは中村が宇野の隣でボールを受けるようになり、更に矢島も落ちてきたり逆に右サイドの西澤が高い位置をとったりして何とかボールを前に運べるように個々が微修正を行って少しずついわきの勢いを削ぎ、逆に34分に直接FKからのタンキのヘッド、CKからの住吉の折り返し(?)からの中村のヘッドと連続して決定機を作り、39分にはまたCKから中村がヘッドで合わせるという決定機を作って、ようやく終盤にかけていわきを押し込めるようになりました。右サイドでの原テル、松崎、西澤の連携、左サイドでの矢島の突破など面白い形が作れるようになって、得点こそ出来なかったものの良い感触を持って前半を終える事が出来ました。
4.終盤に先制して勝ち切った後半
後半、開始からエスパはカルリーニョス、いわきは五十嵐を投入。カルリーニョスを左のシャドウに入れる事で前へボールを運ぶのをスムーズにしようとしたと思うのですが、いわきの方がキックオフから勢いを持って前に出て来て、前半よりもグラウンダーのボールで繋ぐ割合を増やしてきたため、いわきがボールを握る時間が増えました。ただエスパもリトリートした時は5-4-1のブロックを組んで穴を作らないようにしたのでいわきの方はなかなかシュートまで持ち込めず、逆にエスパがカウンターから西澤がシュートを放つなどのチャンスを作ります。更にエスパは63分に宇野に代えて乾を投入。乾が中盤でボールを引き出したりアタッキングサードでパス回しに変化を付け、これによりエスパの攻撃の質が高まります。ただいわきの方も最後の方では自由にやらせず、一進一退のまま時間が過ぎた81分にスコアが動きます。
西澤からのCKをニアで中村がすらし、それをファーサイドで蓮川が押し込んでエスパルスが待望の先制点をあげました。まず西澤のボールが素晴らしかったです。しかもその5分くらい前から足が攣りかけていたみたいで足を気にしていたんですよね。にも関わらずあんな精度の高いボールが蹴れるのは素晴らしいです。また中村のすらしも見事でした。それを蓮川が押し込んだわけですが、前半はセットプレー時にはニアに入っていたんですよね。それをハーフタイムに依田コーチからの指示でファーに入るように変えたようです。依田コーチの的確な指示が見事でしたし、その指示通り動いてプロ初ゴールを決めた蓮川も素晴らしかったです。この後はいわきが何とか同点に追い付こうと攻勢をかけますが、エスパは落ち着いた守備でチャンスらしいチャンスを与えず、1-0でエスパルスが勝利しました。
5.この試合の勝因と課題
非常に見応えのある好試合だったと思います。両チームとも攻守の切り替えが早くてインテンシティも高く、あちこちでバチバチとやり合う姿が見られる緊張感のある試合でした。そんな試合をアウェイで堂々としてみせたいわきはやはり良いチームでした。これでまだクラブ創設12年目というのが凄いですね。この成長度合いだとJ1に上がってくるのもそう遠くないのではないかと思うので、その時はJ1でまたバチバチやり合いたいですね。
そんないわき相手だったとはいえ、前半相手のプレスの前にボールを思うように前に運べずに苦しんだのは反省点ですね。ビルドアップのところで新たな形にして課題をクリアしようとしていたのが一因なのは割り引くとしても、宇野や中村のところを狙われたり両SB、特に吉田のところも狙われて思うようにボールを前に運べず、それどころかボールを奪われ決定機を作られてしまったのは猛省すべきところだと思います。まあ宇野をアンカー気味にして出来るだけ選手を前に置きたいという狙いはわかるのですが、だったら宇野の周囲のSBや相方のボランチである中村などの立ち位置を工夫してプレスのかける先を分散させる仕掛けが必要で、少なくとも中村と松崎をハーフスペースレーンに置くだけじゃダメという事でしょう。まあこれは来季も見据えてのトライだと思うので、次節でも微調整して違うトライをするでしょう。どのようなトライをするかに注目したいと思います。
という事で、前半30分くらいまでは思うようにボールを前に運べなかったのですが、中村のポジションを下げたり矢島も時折落ちたりするなどの微調整を行って、その結果前にボールを運べるようになったのは勝因の1つだと思いますし、良くなかった前半を失点ゼロで切り抜ける事が出来たのも勝因でしょう。後半もいわきにボールを握られる時間が増えたものの決定機は作らせず、逆にカウンターからチャンスを作ったりCKに繋げたりして、そのCKから先制点を奪う事が出来たわけで、秋葉監督の言葉を借りれば「我慢強くしたたかに」戦った結果相手より1点多くとって勝てたという試合で、その意味では我慢強く戦えたのが一番の勝因かなと思います。思えば今季は90分間狙い通り戦えて相手にスキを与えなかった試合というのは数えるほどしかなく、90分のどこかで我慢を強いられる時間帯が必ずありました。そういう試合でも我慢して相手に失点を許さずに勝つ試合が多かったから優勝出来たと思ってますが、この試合も今季を象徴する試合だったなぁと思いますね。
一方で2試合続けてセットプレーから決勝点を奪う事が出来たというのは大きな成果だと思います。2試合とも中村がニアですらしてファーで誰かが合わせる形でとりましたが、同じ形でとれたのは自信に思っていいと思います。この試合はこの得点の時だけじゃなくて34分の住吉が折り返して中村が合わせた形とか38分のニアで中村が合わせた形といった決定機を作ってますし、他にもショートコーナーとかいろいろありました。ウチはこの日の西澤だけでなく矢島、山原と良いキッカーがいますし、宇野もプレースキッカーを狙ってるみたいですから、セットプレーの精度をこれからも上げていって欲しいです。
6.まとめ
この試合での勝利を以て優勝が決定。残り1試合ではエピローグを見るのみとなりました。しかしエピローグ前の肝心の試合で負けてしまっては興ざめです。相手の熊本は前節仙台に勝って意気揚々と乗り込んでくるでしょうが、チケットが完売してまたエスパサポで埋まるであろうアイスタ日本平できっちり勝って、良いエピローグを見させて欲しいなと思います。
(原テルがシャーレを掲げた場面)
(キックオフ時に雲がかかっていた富士山がセレモニーでは頂上まで見えました)
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