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2024年10月 2日 (水)

国立での天王山はドロー(9/28 横浜FC戦)

 先週末は年に1度の国立競技場でのホームゲームとして横浜FC戦が行われました。2週間前から新宿駅南口に大きな看板を設置するなど大掛かりなプロモーション活動を行い、そこへ今季J2で上位を争っていて、試合開始前の時点で首位エスパと2位横浜FCとの勝ち点差がわずか1点という状態で迎える首位攻防戦という願ってもないシチュエーションが重なり、前売りチケットは6万枚以上捌けたとの事。当日は約5万6千人もの入場者数となりましたが、これはJ2で最多入場者数記録だそうで、実際新宿駅とか国立競技場の周辺はエスパルスオレンジの色をまとった人が大勢いてお祭りのようでした。

 試合は1-1のドロー。得点シーンも決定機もさほど多くありませんでしたが、局面での激しいぶつかり合いや何とか対面の相手を剥がそうとする駆け引きとかがあちこちで見られて、凄くレベルの高いエキサイティングな試合でした。試合終了のホイッスルが鳴った後で一斉に大きな拍手が贈られたあたりこの日国立に集まった観客の多くがそう感じたのではないでしょうか。

<明治安田J2リーグ 於 国立競技場>

 エスパルス 1ー1 横浜FC

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1.エスパルスのスタメン

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 SUB:沖、北爪、高木、カルリーニョス ジュニオ、宮本、矢島、アブドゥル アジズ ヤクブ

 前節からの偏向はスタメンでは宮本に代えて宇野が入ったのみ。SUBには高木とアジスが入りました。アジズに関しては前節タンキが脳震盪の疑いがあるために交代する事になったのが影響したのだろうと思います。

2.横浜FCの戦い方

 一昨季J2で2位に入ってJ1に昇格したものの昨季は開幕から思うようにいかず、途中守備的な戦い方にシフトする事で持ち直したものの最下位に終わり、1年でJ2へ降格する事になってしまった横浜FC。しかし一昨季からチームを指揮する四方田監督を留任させ、主力選手も一部を除きほぼ残留した事で今季のJ2でも有力な昇格候補と目されていました。開幕直後の2試合ともドローに終わり第4節で栃木に敗れるなど滑り出しは良くありませんでしたが、少しずつチーム力を高めて成績を安定させていき、第16節ではエスパに2-0で快勝。そこで勢いのついた試合はその前の第15節から前節まで18試合負け無しというクラブ記録を打ち立てました。

 システムは3-4-2-1。前からの厳しいプレスでなるべく前でボールを奪い、ボールを奪ったら素早くボールを前へ送って相手を押し込み、両サイドからのクロスで得点を狙う。たとえ流れの中では取れなくてもJで屈指の左足のプレースキックの精度を誇る福森からの正確なクロスで仕留めるという飛び道具も持っているわけで、おかげで得点ゼロで終わる事が殆どありません。今季の横浜FCの得点のうちセットプレーからの得点は18点。これは全得点のうち3割強。更にクロスからの得点も13点で全体の2割と、セットプレーとクロスからで全得点の半分以上を占めるのが大きな特徴です。このように割とシンプルな戦いを仕掛けるのが横浜FCの特徴ですが、それを支えるのがガブリエウ、ンドカ ボニフェイスらの屈強なCB陣とユーリ ララ、井上の運動量が多くて対人能力の高いボランチで、このようなメンバーが後ろを支える横浜FCは第32節までの失点がわずか19失点で勿論リーグ最少。更にセットプレーからは1失点もしていません。このような横浜FCの守備陣を崩すのは簡単ではなく、非常に難しい試合になる事が予想されました。

3.堅い試合展開となった前半

 このような難しい相手と戦うにあたってエスパはいつもと少し戦い方を変えてきました。基本システムは前述した通り4-2-3-1で、ボールを保持している時は以下の形になります。

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 これもいつもと変わらないですね。両サイドハーフが中に絞って、SBが上がるスペースを作る形です。いつもと変えたのはボール非保持時です。

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 まず右サイドハーフの西澤が最終ラインまで下がって5バックを形成。前の方も乾がトップの位置に入って前プレのスイッチ役を果たし、北川は右のシャドウの位置に入って相手左CBの福森を見るタスクを行いました。福森が後ろから精度の高いボールを入れたりタイミングを見て前に上がって最後の崩しに関わる事があるので、それを防ぐためだったようです。

 前の方の立ち位置を変えるのはいつもやっている事ですが、これまでは後ろの枚数は固定であり、今回のように1試合の中で4バックと5バックをボールを保持しているか否かで切り替えるのは今季初めてだったわけですが、ボール非保持時においては一定の効果をもたらしました。横浜FCは相手を押し込んだ時は両WBが上がって5トップ気味で攻めかかり、単純にクロスを上げたりシャドウとWBとの連携でポケットを取ったりと非常に分厚い攻めをしてきます。実際5月にアウェイで対戦した時は4バックで相手の5トップ気味の攻撃をまともに浴びて耐え切れずに先制を許してしまいました。それに対してこの試合では数的同数で対応出来たので相手に簡単にクロスを上げさせず、ポケットを狙う動きも宇野、中村の両ボランチがしっかりとケア出来ていました。これにより横浜FCはなかなかエスパの守備ブロックを崩す事が出来ず、前半横浜FCの決定機といえるのは23分のCKからのジョアン パウロのシュートくらいだったと思います。

 一方でエスパも横浜FCのコンパクトなブロックと前からの厳しいプレスの前になかなかビルドアップが思うようにいかず、決定機と呼べるのは30分の北川がペナ内でボールを受けてからのブラガのシュートと42分のデザインされたCKくらいでした。そうなってしまった要因は2つあると思います。1つは4バックと5バックを使い分ける形にした事。この場合確かに後ろはなかなか相手にスキを与えませんが、一方で中盤や前の選手の人数が減る分前でボールを奪うのが難しくて、どうしてもボールを奪う位置が低くなってしまいます。なのでいざボールを奪って前に運ぼうとしても横浜FCの選手が前に多くいる分難易度が高くなるのです。両サイドの原テル、山原は相手の両WBにきっちり捕まえられているし、真ん中にも相手の1トップと2シャドウに加えてユーリ ララと井上もいるから簡単には前に出せません。唯一乾がボールを引き取ってターンできた時はボールを前に運べましたけど、横浜FCも注意は払っていますから必ず出来るとは限りません。という感じで詰まってしまったかなというのが1つ目です。

 もう1つは秋葉監督も仰っていたメンタルの部分ですね。これについては最初に読んだ時は「そうかな?」と思ってました。ただ改めて試合を見直してみて「それもあるかな」と思い直しました。というのは、先制点を奪われた後は後ろからタテパスを入れる回数が増えてるんですよ。まだ選手交代とともにシステムを変更する前の時間帯でも。その分そのタテパスをカットされて逆襲を食らう場面も5回くらいありましたが、3~4回ほどパスを通して相手陣に攻め込む事も出来ていたんです。また前でボールを奪ってチャンスを作る場面もありました。要は失点して尻に火がついてから攻撃のギアを上げたわけです。だから「前半からこうした積極性を見せて欲しかった」という秋葉監督のコメントも理解できます。ただ選手達の気持ちもわかるんですよね。この試合の前の時点でエスパが勝ち点1差で優位に立っていたのですから最低でもこの状況は維持したいと思っていたでしょうし、実際に横浜FCの前からの守備を受けたら余計にタテパスを入れる事に躊躇してしまうんじゃないですかね。勿論いずれはあれくらいの前プレを受けても自信を持ってタテパスを入れられるようになって欲しいですけどね。

4.先制を許した後半開始から11分間

 後半、両チームとも選手交代、システム変更ともになく、前半と同じような堅い展開となりました。ただ横浜FCは開始からサイドチェンジを前半より増やしてきました。おそらくエスパの守備ブロックを揺さぶる事で何とかスキを作ろうとしたのだと思いますし、53分にはサイドチェンジでこちらの右サイドで起点を作り、それにより空けたスペースに福森が入り込んでシュートを放つという場面を作りました。その流れの中で56分にエスパは横浜FCに先制を許します。

 こちらから見て右から左へサイドチェンジしてボールを運び、その後真ん中を経由して右サイドにいた中野へ。中野はポケットに走りこんだ小川とパス交換した後ダイレでクロス。高橋利樹がニアで合わせてこれはクロスバーに弾かれたものの、こぼれ球にいち早く反応したジョアン パウロが押し込んで横浜FCが先制しました。

 ウチとしてはまずサイドチェンジによってブロックをスライドしなければならなくなった分右サイドへの応対が若干遅れてしまったのと、小川がポケットに走った時に西澤までその動きに釣られてしまったのが拙かったですね。それにより中野にほぼフリーでクロスを入れられてしまったので。それ以外の対応は仕方がなかったというか、西澤の対応も含めて相手の方が上手でしたね。

5.ビハインドを追いついてみせた後半残り34分

 1点ビハインドとなったエスパは直後から攻撃へのギアを上げ、62分に宇野のパスカットから途中投入のカルリーニョスがペナ内に入るなどして最後原テルからクロスボールを入れるなどのチャンスを作りますが、なかなかシュートまで持っていく事が出来ませんでした。このためエスパは68分に三枚替えを敢行。西澤、宇野、北川に代えて北爪、宮本、矢島を入れて、システムもカルリーニョスを1トップにしての3-4-2-1に切り替えました。おそらくシステムを同じにする事で1対1を仕掛けやすい形にしたのだと思います。そしてその6分後にエスパが同点に追い付きます。

 横浜FCのゴールキックを自陣で回収して最終ラインからビルドアップをスタートさせ、右CBの原テルにボールが渡ります。ここで原テルは20メートルほど自らボールを運んで右へ流れて来たカルリーニョスへパス。これを受けたカルリーニョスがンドカ ボニフェイスと競り合いながら横を追い越した矢島に預け、矢島は見事なターンでガブリエウをかわしてラストパスを送るとそこに走り込んできたのは原テル。原テルのシュートがGKの市川と山根に当たってボールがゴール方向に転がるところを後ろから走り込んだ宮本が身体ごと押し込んでエスパが同点に追い付きました。

 60メートルほど走った原テルを筆頭にボールに関わったカルリーニョス、矢島、宮本の良さが詰まったゴールでした。また、これは映像には入ってなくて実況の松下さんが仰っていた事ですが、原テルにボールが渡る前から北爪が前にスプリントしてるみたいなんですよ。その動きで対面となる中野を後ろに押し下げた事で原テルのドリブルのコースが開けたのだと思います。隠れたファインプレーですね。

 これで更に勢いの出たエスパは更なる攻撃を仕掛けます。その前にシステムを同じにした事でより前でボールを奪えるようになり、75分の矢島、83分の中村など惜しいシュートを放ちます。一方の横浜FCも前への圧力を強めてエスパ陣内へ攻めかかり、試合は全く互角の様相となりましたが、結局どちらも勝ち越し点を奪うには至らず、エスパルスと横浜FCとの天王山は1-1のドローとなりました。

6.まとめ

 試合全体の感想としては、非常に見応えのある試合だったと思います。エスパサポとしての立場からすると前半はもどかしさのようなものも感じましたが、後半は点が入った事で一気にヒートアップし、そこへ選手交代による駆け引きも見られたし、何より同点ゴールは今季のエスパルスらしい後ろから選手が次々と湧き出てくるように前に出た事によって生まれたゴールなので、それを見る事が出来て良かったです。あとはこの試合ではボール保持時は4バック、非保持時は5バックという変則的な戦い方を選択しましたが、権田の試合後のコメントにあるように本来なら今季ずっと積み上げて来た4-2-3-1でいくのが理想だと思うので、その理想とする戦い方を常に出来るようにするために何が必要かを残り5試合を通して考えて積み上げていければ、という大きな宿題が出来たと思いますが、そこは今後もちゃんと見据えてやって欲しいし今のチームならやってくれるだろうと思っています。

 翌日の試合で長崎が岡山に敗れて勝ち点差が開いたため、エスパは最短で次節のアウェイでの水戸戦で自動昇格を決められる状況となりました。ただそれは長崎の結果次第ですからそれはあまり考えなくていいかなと思います。それよりも昨季涙をのんだ水戸の地で勝利をおさめて昨季の悔しさを多少なりとも晴らしてくれればと思います。相手の水戸はアウェイで鹿児島に0-3で敗れましたが、ハイライト映像を見る限り決定機の数は殆ど変わらない感じでしたし、その分ホームでは相当気を引き締めてくるでしょう。また難しい試合になるでしょうが、是非とも勝って勝ち点3を持ち帰って欲しいです。

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