悔しい逆転負け(10/20 山形戦)
先週日曜(10/20)はホーム・アイスタ日本平での山形戦でした。アイスタ日本平での試合は約1か月ぶりで、好調の山形が相手という事もあってか、チケットは昨季の最終戦以来の完売。そこへあと1つ勝てばJ1復帰を決める事が出来、更に前日に横浜FCが敗れたため勝てば再び首位に立てるという様々な条件が重なって、アイスタ日本平には1万8千人もの観客が訪れました。試合前の雰囲気は最高でしたね。
試合は75分にエース北川のゴールで先制しながらの逆転負け。リーグ戦でのホームでの無敗記録、先制した時は全勝という記録の両方が崩れるという最悪の結果となりました。先制した時は「いける!」と思ったのですが、甘かったですね。
<明治安田J2リーグ 於 IAIスタジアム日本平>
清水エスパルス 1ー2 モンテディオ山形
1.エスパルスのスタメン
SUB:沖、北爪、高木、西澤、矢島、中村、ドウグラス タンキ
スタメンはCBに高橋が復帰する一方で山原がコンディション不良という事で吉田が左SBに入りました。とはいえほぼベストに近いメンバーが並んだという印象でした。サブには松崎に代えて西澤が入った以外は前節と同じでした。
2.山形の戦い方
前節まで5連勝を果たし、プレーオフ圏内の6位と勝ち点差1の7位につけている山形ですが、リーグ戦中盤までは苦しんでいました。渡邊晋監督が今季も指揮を執り、昨季の中核メンバーの多くが残っていたので昇格の有力候補の1つと見られていました。が、ウィングながらチームトップの13得点をあげていたチアゴ アウベスが退団し、昨季10得点をあげて今季も活躍が期待された藤本が5月に左膝の十字靱帯損傷という大怪我で離脱した等の影響からか、渡邊監督仕込みのビルドアップによってウィングにボールを預けるところまでいっても肝心の得点が奪えない状態となり、結果としてなかなか勝ちきれず順位も一時は16位まで低迷し、監督解任のウワサまで出る状況でした。しかしクラブは状況打開のために夏のウィンドウで湘南からディサロを、鹿島から土居をいずれも完全移籍で獲得。これにより真ん中でチャンスを確実にゴールに繋げる選手とビルドアップにプラスアルファを加える事の出来る選手を獲得した山形は、中断明けの10試合で8勝1敗1分という好成績をあげ、前述の通り7位まで順位を上げてきました。
システムは4-2-1-3。渡邊監督仕込みのポジショナルプレーに基付くビルドアップでスムーズにウィングまでボールを運び、イサカゼインらのウィングによる仕掛けやSBのサポートでサイドを崩して、ディサロ、土居が仕留めるというのが基本スタイル。一方の守備は被ゴール期待値が1.5点とあまり低くないのですが、GK後藤を中心に粘り強く対応する事で実際の失点は平均1失点に留めています。いずれにしろ現時点のチーム力は横浜FCと同等で勢いはトップクラスと思われ、厳しい戦いが予想されました。
3.試合経過・前半
この試合で小さくない影響を与えたのは風でした。試合前からアウェイ側の東サイドスタンドからホーム側の西サイドスタンドに向かって風が吹き、それによりロングボールを蹴った時にはボールが風によって遠くに飛んだり止まったりしました。その状況下で試合前のコイントスで北川が選んだのはボール。これによりエスパは前半風下、後半風上で戦う事になりました。
この風を考慮してか、前半、特に開始20分のエスパのボール非保持時の前プレはかなり控えめでした。中途半端に前プレをかけてウラにロングボールを入れられる事を警戒したのでしょう。4-4-2のブロックを作るものの2トップの北川、乾は基本的にけん制のみに留め、その分ブロックをいつも以上にコンパクトにして簡単にボールを入れさせないようにし、ボールを入れてきたら素早くチェックをかけて奪いにかかる。特にブロックの横幅を圧縮させていましたが、これが試合前に原テルが言っていた守備の微修正でしょう。このブロックに対して山形はボールは握るもののシュートには至らない状態に陥り、一方のエスパはボールを持ったら両サイド、特に右サイドを効果的に使って攻撃を仕掛け、4分、5分、20分とチャンスを作り、31分には乾からのクロスに宮本がヘッドで合わせるという前半最大の決定機がありましたがGK後藤雅明のビッグセーブに合い結局前半は得点無し。ただ山形にも22分のミスからのディサロのシュート以外は決定機を作らせず、前半は緊張感を保ったまま0-0で終了しました。エスパとしては前半のうちに先制出来ていれば良かったのですが、風下の難しい状況を失点ZEROで乗り切れた事に関しては手ごたえがあったのではないかと思います。
4.試合経過・後半
後半は風上となったエスパが、前半と比べてより積極的に前プレを仕掛けるようになりました。それにより山形は前半に比べるとミスが増えて思うようにボールを握れなくなりました。逆にエスパはボールを握る時間が増え、また前でボールを奪う場面も数回作るなど優勢に試合を進められるようになり、62分にCKのこぼれ球からの高橋のヘッド、63分には原テルのミドルといった惜しい場面を作っていきました。ただ山形からすると前プレを剥がす事が出来ればチャンスを作れるわけで、結果として山形の方も前半と比べてチャンスシーンが増えていきました。60分にはポケットに入った土居のクロスからゴールネットを揺らされる場面も作られています(土居がポケットに入った時に原テルを倒した事でファウルと判定されノーゴール)。そうやってお互いにチャンスを作っていく中で両チームともブロックをコンパクトに保てなくなって、エスパが2~3回チャンスを作ったら山形が1回チャンスを作るというオープンな展開となり、エスパが優勢ではあったけれど予断を許さない状態となりました。
そんな中、75分についにエスパルスが山形ゴールをこじ開けます。右サイドで矢島と原テルでパス交換をしてそこに乾も寄っていった事で山形のDFを引き付けたところで矢島がアーリークロスを入れると、山形DFがクリアし切れずボールはカルリーニョスの足元へ。カルリーニョスは低い弾道のシュートを放ち、これは後藤雅明に止められたもののこぼれ球を北川が押し込んで、ついにエスパが先制しました。矢島と原テルの何気ないパス交換で山形の選手達を引き出したところでクロスを入れた矢島のクレバーさ、カルリーニョスのシュートの正確さ、そして北川のゴールへの嗅覚といったそれぞれの持ち味が凝縮された見事な得点でした。この時のアイスタの雰囲気は最高でしたね。
ただ先制ゴールの1分前、山形はトップのディサロに代えて高橋潤哉、トップ下の土居に代えて後藤優介、左ウィングの國分に代えて坂本という三枚替えを敢行していました。その効果が先制ゴールの5分後に表れます。CBの安部からウラへのボールに坂本が飛び出してポケット付近でボールを受けて原テルを引き付けて後ろから走り込んだ高橋潤哉にパス。高橋潤哉がニアをぶち抜くゴールを決めて、山形があっと言う間に同点に追い付きました。まずウラ抜けしてきたのが國分でなく坂本だったのがポイントで、國分は突破というよりボールを多く触ってチャンスメイクする選手なのに対し坂本はスピードがあって自分でも突破出来るタイプの選手。全く違うタイプが自分が守るゾーンに侵入してきた事で原テルの対応が遅れたかなと思います。また宮本の戻りも遅かったですよね。あと高橋潤哉がフリーでボールを持った時高橋がもっと寄せるべきだったのではという指摘もありますが、高橋はまずファーのシュートコースを消したかったのとそれ以上にマイナスのクロスを入れられる事を警戒したと思います。山形はポケットに入ってからのマイナスのクロスを高い確率で入れて来るので。同じ理由で権田もどちらかというとマイナスのクロスを警戒していてその分シュートに対応し切れなかったのではないかと思います。まあシュート自体も素晴らしいものでした。
同点に追い付かれたエスパは再び勝ち越そうと攻撃の圧力を高めようとし、85分には三枚替えを敢行しました。が、代わって入った高木がイサカゼインを倒したという事でファウルをとられてFK。左利きの小西によるアウトスイングのボールをファーサイドで後藤優介が合わせて2点目。エスパが逆転を許しました。ゴールそのものは素晴らしかったとしか言いようがないです。小西のボールは精度が高かったですし、角度のないところからヘッドでゴールを決めた後藤優介も見事でした。が、そもそも高木が滑ってファウルしてしまったのはちょっとまずかったですし、FKのボールには小西の他に高江がいて、まず高江が蹴るふりをした事でこちらのラインが下げさせられちゃったんですよね。開幕戦の熊本戦で同じようなダミーで失点してそれで他のチームもやって危ない場面にされてきたのですが、久しぶりにそれをやられてあっさり引っかかったのは残念でしたね。
この後懸命に攻撃を仕掛けたエスパでしたがスコアは動かず。エスパルスが今季初の逆転負けでアイスタ日本平での初黒星を喫してしまいました。
5.敗因
要塞であるはずのアイスタで敗れたのも逆転負けしたのもショックでしたし、試合後二日間くらいは悔しさが消えませんでした。が、試合内容全体としては決して悲観するものではなく、あと1勝で2位以内を確定できるエスパルスと現在一番勢いのある山形という注目の対戦という前評判にふさわしい試合でしたし、非常に拮抗した見応えのある試合だったと思います。だから試合後の乾のコメントの「何にも変わってへん」というコメントには疑義がありますし、ましてや「ウチが崩壊状態」というのは全くの認識違いだと思います。本当に「崩壊状態」だったらもっとズタズタにされてましたよ。
ただ「負けに不思議の負け無し」というのはまさにその通りで、試合内容の大枠では非常に拮抗していたのですが細部のところでのわずかな差が勝敗を分けたと思います。以下、敗因をつらつらあげます。
①山形の選手交代に対応し切れなかった
前述した通り、先制するまでの時間帯はエスパが数回チャンスを作ったら山形も1回チャンスを作るという感じの攻め合いになっていました。これはエスパとしては決して良い展開とは言えないので、先制した以上は試合を落ち着かせて少しずつゲームをクローズする方向に持っていく必要がありました。が、アイスタの雰囲気にのまれたのか、先制した後も同じ勢いでいっちゃってましたよね。まあ選手のせいとは言い切れないですが、いつもならボールを握る時間を増やそうとしていたので、まずそこが拙かったと思います。
それに加えて山形は74分に選手交代で前の3人を代えていましたが、その1分後に先制してワーッてなっちゃったのか、代わって入った選手を誰がどう見るかが曖昧になっていたんじゃないかと思います。それが同点劇に繋がってしまったのかなと感じました。
②セットプレーの精度や工夫不足
前述した通り、山形の2得点目は見事でした。試合前に決めていた狙い所を見事に突いたゴールだったと思います。それに比べるとウチのセットプレーはGKを釣り出したキックからの高橋のヘッド以外は淡泊というか工夫が足りなかった感じがしました。山原がコンディション不良で不在だったのが響いたとは思いますが、最初は宇野に蹴らせていたものの、宇野が疲れてきたという事で中村に蹴らせ、それがいまいちだったのか矢島に代えたというのはお粗末だと思います。これが③に繋がります。
③効果的な選手交代が出来なかった
山形は74分に高橋潤哉、後藤優介、坂本の3人を投入して3人とも得点に絡みました。それに比べるとエスパの選手交代はあまり機能しませんでした。特に納得いかないのが85分の3枚替えです。タンキを入れるのはいいとしてこの日得点をあげていた北川を下げたのは納得できないです。勝ち越しを狙う以上北川を残してタンキとの2トップにすべきでした。更にカルリーニョスに代えて西澤を入れたのも疑問です。これによってタンキにボールを運ぶ選手が疲弊した乾しかいなくなったので。西澤は運動量が豊富でキックの精度はチームで1,2を争いますが、推進力のある選手ではありません。ならば西澤でなく北爪を入れるか、サブに推進力のある松崎を入れておくべきだったと思います。そして吉田から高木への交代に関しては、交代して早々にイサカゼインに突破を許してFKを与え、後藤優介を見ていたはずが外されてしまった。この大一番で出すには荷が重かったかもしれません。結果論ですが。
前から何度も書いている事ですが、僕はサッカーの監督の仕事の8割は試合前に終わっているもので、試合中の指示や選手交代は2割程度にしか過ぎないと思っているので、選手交代で監督を評価しないようにしています。チームに戦術を授け、それを落とし込むための練習メニューを考えて実施し、試合毎に作戦をたて、試合後はそこで出た改善点の修正のためのトレーニングを考える。そうしたサッカーに関わる事だけでなく30人程の選手達に共通の目標を掲げてそれを達成する事に選手達が邁進するようにマネジメントを行うというのは相当な重労働であり、それだけで8割くらいは占めてしまうんですよ。だから選手交代が下手だったとしてもそこに至るまでのマネジメントに致命的な問題がなければいいんじゃないの?というのが僕の立場です。
が、「昨季の悔しさを晴らすためにより細部にこだわる」と仰るのであれば、選手交代のところももっとこだわって欲しいと思ってしまうんですよね。特にこの試合で渡邊監督の選手起用を見てしまうと余計に。ここは秋葉監督ご自身が「矢印を自分に向けて」選手交代をどうすべきだったのか、今後どうすべきなのかを突き詰めて欲しいです。
6.敗因とは言えないけど気になった事
以上、僕なりに考えた敗因を3つあげました。ただ敗因とまでは言えないのですが、気になった事をもう1つ。それは矢島が試合後に語ったコメントに表れてます。矢島は「相手が中を締めるのは当たり前なのに中ばかり言って外に広げない。」と指摘し、「何度同じ事をやれば気が済むのかというくらいチームとして幼い」とやや厳しめの事を言いました。それを受けて見返したところ確かに前半の特に30分以降に3回、後半も1~2回ほど無理に中を通そうとして引っかけられる場面があったんですよ。これも前半思ったほどこちらの思うようにならなかった一因かなと。それに関連して秋葉監督のコメントにあったのが「できれば対角に持って行けたら点が取れた」というところ。確かに片方のサイドに寄せておいて対角の方向にサイドチェンジするとかすればより効果が出たと思うのですが、前半はほぼなかったですね。いずれにしろまずサイドを起点に揺さぶってサイドに人を寄せておいて、それによって真ん中が空いたら真ん中に付けるというセオリーに基付くボール回しも矢島も秋葉監督も意識した上でこの異なるコメントをされていると思います。それを前半20分くらいは意識してやっていたと思うのですが、大事な試合でなかなか点がとれないという事で焦ってしまったのかもしれませんね。普段全く出来ていないわけではなく悪い時に出るクセだと思うので、そこはもう1度チーム内で意思統一して欲しいところですね。
7.まとめ
勝てば昇格が決まって首位にも返り咲く事が出来る満員のアイスタ日本平での試合という絶好のシチュエーションであろう事か逆転負けを喫した事は本当に残念です。「また大事な試合でコレか!」と怒ったサポも少なくないでしょう。僕もその1人です。が、いくら嘆いても終わってしまった事は取り戻せません。しかも内容的にどうしようもない負け方をしたわけではないです。それにこと昇格に関してはあと1勝で自動昇格というシチュエーションは変わっておらず、しかもあと3試合チャンスはあります。前述したような細部の修正は必要ですが、別に大枠をガラガラポンする必要は全くないですし、基本的にはここまで35試合で勝ち点73を積み上げた戦い方を残り3試合も遂行すればいいのです。ここは慌てずこれまで通り戦えば良いと思います。
次はアウェイで栃木戦。ここ4試合負けていませんし、ここで負けると降格の可能性が一気に高まりますから、ホームで必死に食らいついてくるでしょう。そうしたチームをいなすのは決して得意なチームではありませんが、J2優勝を目標とするなら苦手とか何とか言っていられませんから、今度こそ勝ってまずはJ1昇格を確定させて欲しいです。
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