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2024年9月12日 (木)

痛み分け(9/7 長崎戦)

 先週末はホーム・アイスタ日本平に3位の長崎を迎えての試合でした。この試合に勝つ事が出来れば自動昇格に関して長崎に対しかなり優位に立てる重要な一戦という事で、ゴール裏サポは旗を使ったコレオを行ったり試合開始直後に物凄い音量のチャントを歌ったりと本当に気合が入っていました。

 結果は1-1の引き分け。エスパとしては首位の横浜FCとの勝ち点差が広がってしまったという意味で、長崎としては2位エスパとの勝ち点差8を縮められなかったという意味で、まさに「痛み分け」という結果でした。まあより痛みがキツイのは優勝も自動昇格も遠のいてしまった長崎の方だとは思いますが。

<明治安田J2リーグ 於 IAIスタジアム日本平>

 エスパルス 1ー1 V・ファーレン長崎

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1.エスパルスのスタメン

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 SUB:沖、蓮川、吉田、宮本、矢島、西原、ドウグラス タンキ

 高橋がスタメンに復帰した一方で原テルは間に合わず、右SBは北爪が入りました。SUBではアジズに何かトラブルがあったみたいで代わりにタンキが入りました。

2.長崎の戦い方

 シーズン開始前にカリーレ前監督との契約問題があってゴタゴタした長崎でしたが、代わって就任した下平監督がチームをまとめ上げ、第3節でウチ相手に4-1でリーグ戦初勝利をあげて更に自信がついて、第22節のアウェイでの甲府戦まで22試合負け無しとJ2歴代2位の記録を作りました。が、第23節にホームで水戸相手に23試合ぶりの敗戦を喫して、その後も4試合勝ち無し。第22節以降の6試合で3分3敗となり、2位のエスパとの勝ち点差は8に広がって、自動昇格に向けて正念場となっていました。

 ただ第29節現在で52得点でJ2で1位の得点をあげた攻撃力は健在。エースのエジカル ジュニオは怪我らしくて不在でしたがフアンマはサブに復帰しており、4-1-2-3のシステムで両サイドから攻めかかる攻撃はウチにとっては脅威でした。実際に当たってみてもこの日トップに入った中村と一列下のマテウス ジェズスが巧みにポジションを入れ替えて真ん中で起点を作り、サイドのマルコス ギリェルメ、澤田らが絡む攻撃は迫力がありました。またこの試合のみの特徴かは不明ですが、結構前の4人が流動的にポジションを入れ替えてくるので、ウチとしては捕まえるのが難しかったと思います。SBの増山、米田のオーバーラップも見なければいけませんし。ただそうやって前半に飛ばし気味に動き回った分が後半に響いたのかもな、とも思いました。

3.試合経過

 キックオフ直後からエスパがエンジン全開で仕掛けてきました。ボール非保持時も結構積極的に前プレをかけて相手のミスを誘ってボールを奪う事が出来ていて、優位に試合を進めます。11分には北爪のグラウンダーに合わせてフリーで乾が走り込んだり(安部が戻ってクリア)、22分には乾の落としから北川がシュートを放つなどのチャンスを作りました。しかし長崎も10分のマルコス ギリェルメ、19分の米田と2回決定機を作り、迎えた24分、北爪のバックパスをマルコス ギリェルメが奪ってファーサイドへクロスを上げ、どフリーでボールを受けたマテウス ジェズスが見事なコントロールショットを突き刺して長崎が先制しました。

 ホームのアイスタで今季初めてビハインドを背負う事になったエスパは必死の反撃を試みますが、逆に先制して勢いの出た長崎を前に攻め切れずボールを奪われては逆に攻め込まれる事の繰り返し。焦って前プレを仕掛けてはかわされて両サイドのウラを突かれたり真ん中で起点を作られて、31分、34分、39分と立て続けに決定機を作られます。エスパも少しずつ立て直して41分、44分とチャンスを作りましたが決め切る事が出来ず、前半は0-1で折り返しました。

 後半も開始からエスパが積極的に仕掛けて、長崎がそれを凌いで反撃するという立ち上がりとなりましたが、50分にエスパが同点に追い付きます。自陣右サイド深くでボールを奪い、山原から前方へパス。これが安部に当たって乾の足元へ。乾はドリブルで相手陣ペナ付近までボールを持ち出した後、全速力で右サイドを駆け上がったブラガへラストパス。ブラガがこれをゴールへ叩き込んで同点に追い付きました。

 これで完全に勢いを得たエスパが逆転ゴールを狙って長崎に攻めかかり、何度も決定機を作ります。ボール非保持時も前からプレスをかけて簡単にボールを出させず、押し込まれてもしっかりとブロックを作って長崎に付け入るスキを与えません。しかし57分の宇野、58分の北川、67分の乾、68分の乾、82分の矢島、90+6分の住吉と何度も決定機を作りながらも得点には至らず、試合は1-1でのドローとなりました。

4.前半リードを許した理由

 1-1という結果については、勿論ベストではなかったですが、ベターな結果で、少なくとも最悪の結果ではなかったと思ってます。ただ改めて試合を振り返ると「勝てる内容だった」とも感じています。やはり前半攻勢に出ながら得点をとれず先に失点してしまった事、そして後半同点に追い付いて決定機を数多く作りながら勝ち越しまでは至らなかった事の2点が勝ち点2を失った要因でしょう。という事で、前半と後半に分けて、それぞれ何が良くて何が悪かったのかを書いていきます。

 試合開始からどちらかというとペースを握ったのはエスパでした。CBの2人プラスSBのどちらかの3枚でビルドアップをスタートし、ボランチの2人と乾の3人でボールを引き取って、そこから両サイドを使って仕掛けていきました。11分の北爪のグラウンダーのクロスが入った場面なんかは惜しかったと思います。ただ相手最終ラインのウラ狙いのパスや動きが殆どなくて、相手のブロックの前でボールを回している場面が非常に多かったです。ブロックの中に入れなくて外回しのパスばっかというわけではなかったですが、それでも相手DFを後ろ向きにさせる動きやパスがないと長崎相手だと完全には崩しきれないですよね。24分に先制されてからは焦ったのかサイドを変える事もなくなって真ん中を一発のスルーパスを通そうというのも少し多くなったし。それだと長崎としたら守りやすいですよね。41分に山原のグラウンダーのクロスを北川が落として乾がシュートを撃つシーンは良かったですけど、それでもDFを前にしてのプレーですし、もうひと工夫いるよなぁと思いながら見てました。

 一方の長崎は長崎ホームでウチと当たった時と同じで、最初は執拗に両サイドのウラを狙ってきました。エスパの前プレが結構きつくて蹴らされて味方と合わない場面もありましたが、10分、CBの照山からSBの増山にボールが渡った時に、増山に山原が食いつきます。それにより山原のウラが空いたのを見てインサイドハーフの安部が流れて増山がそこにパスを出し、住吉がカバーしたのですがパスカットし切れずに安部がどフリーでボールを持って中へ侵入し、最後にマルコス ギリェルメが際どいシュートを放つという場面がありました。その後19分にも前プレを剥がされて押し込まれ、増山のクロスから逆サイドのSBの米田にどフリーでシュートを撃たれてしまいます。こうやって数少ないながらも決定機を作られた事でエスパの最終ラインは思うように上げられなくなりました。それを見た長崎は今度は真ん中の中村へ斜めのクサビのパスを入れるようになり、そこから34分、39分と危ない場面を作られました。そうかと思えば43分の場面のようにサイドに長いボールを入れてそのボールをヘッドで内へ返してそれを拾ったマテウス ジェズスが際どいシュートを放つというのもあったし、前半に関しては長崎の方が攻撃時の揺さぶりが上でした。じゃあ長崎にあってエスパになかった攻めって何かというとウラ狙いなどで相手DFを後ろ向きにさせる事じゃないかと思います。

 尤も先制を許したのはミスからですけどね。左SBの米田に北爪が食いついたのを見て米田がそのウラへパスを出して、それをマテウス ジェズスとポジションを入れ替えていたマルコス ギリェルメが受けようとするのですが、スライドしてきた住吉が先にボールに触っていったんエスパがボールを回収しました。が、そこから前に繋ごうとして北爪にボールが渡ったのですが、後ろから米田が食いついてきたので後ろにいた高橋にバックパスをしたのですが、パススピードが弱いのもあってマルコス ギリェルメに奪われてしまい、そこからのクロスが一番怖いマテウス ジェズスに渡ってしまって難なく決められてしまいました。北爪としては後ろ向きでボールを受けた上に前を向ける状態じゃなかったのでバックパスを選択する気持ちはわからなくはないのですが、マルコス ギリェルメが近くにいたのに気が付かなかったのは拙かったですね。高橋もちょっと下がり過ぎだった気がします。いずれにしろ痛いミスからの失点でしたね。

5.後半盛り返した理由

 かくて今季初めてビハインドを背負った状態でハーフタイムに入ったわけですが、THE REALにもあったように秋葉監督から「あと45分間のうちに2点取ればいい。もっとポケットを使って揺さぶっていこう」という趣旨の指示がありました。そしてハーフタイム明けのエスパは45分30秒にいきなり乾がウラに走ってそこにパスが出てそれにより長崎を押し込み、その後乾がポケットに侵入して北爪がそこにスルーパスを出して乾がそれを受けてクロスを入れるという場面を作りました。そうやって早くも指示通りにウラへの動きやポケットの侵入によって相手DFに後ろを向かせる攻めが出始めたところで、50分に同点弾が生まれます。まあこれは自陣からのカウンターですし、山原からのパスが安部に当たって乾の足元に入るという幸運があってのものですが、その後の乾のトップスピードでのドリブルが素晴らしかったですね。しかも斜めにコースをとる事で後ろから秋野が戻るスペースを消しているのが見事というかIQが高いですよね。ブラガも自ら長崎のパスをカットしてから全速力で走って力強いシュートを撃ってくれたし、目立ちませんが北川が乾にクロスするように走る事で長崎のDFの注意をバラけさせていました。

 これで流れを掴んだエスパが長崎を押し込む場面が増えていき、何度も決定機を作るようになりました。そのように出来た理由の1つは執拗にポケットを突いた事でしょう。57分の宇野のシュートも58分の北川のヘッドも2人が自らポケットに侵入して撃ったものですし、59分もブラガが右からカットインする時にポケットに入ろうとしていた北爪とのワンツーで真ん中へ侵入し、そこから北川のニア上を狙ったシュートに繋げています。DFにしたら前と左右だけでなく後ろも警戒しないといけなくなると対応が難しくなりますし、リトリートした状態から更にそのウラを突かれるのは厳しいですよ。前半のエスパの攻めになかったのはまさにこういう攻めで、秋葉監督の指示を受けて修正してみせたのは見事だったと思います。

 これで逆転ゴールを奪う事が出来れば最高だったのですが、それが出来なかったのが課題ですね。67分の乾のシュートや68分の高橋のヘッドなど「枠入れようよ」という系のものについてはシュートの精度を上げる事に尽きると思いますが、他に「もう一工夫した方が良くない?」という場面もありました。前述した57分の宇野のシュートの場面ではニアに北川が入っていたのでそこにパスを出した方が可能性が膨らんだと思いますし、58分の北川のヘッドについてもあそこからヘッドで決めるのは難易度が高いので、そこからダイレでマイナスのパスを出した方が良かったかなと思います(山原からのボールが北川の頭に合わせたものだったのでそれも難しいですが)。

 なおシュート精度の件で何かと批判されがちな北川ですが、逆に言うとあれだけチャンスに絡んでいるのでそれだけでもチームに貢献していますし調子が悪いわけではないと思います。ただ得点出来ていない分シュートの時に力が入っているようにも見えますね。だからちょっとした心の余裕みたいなものが持てればいいように思います。例えば44分に相手のミスを拾ってペナ内に侵入したものの角度がなくなった中で強引にシュートを撃った場面がありましたが、例えばアイスタでの仙台戦のゴールの時にはシュートを撃つふりをしてボールを持ち帰ましたよね。そうした相手を見る余裕みたいなものが持てるようになると変わってくるんじゃないかと思います。

 なお後半エスパが盛り返す事が出来た理由として、長崎の方が先にスタミナが切れて足が止まったのもあげられると思います。エスパが前プレ時の寄せをよりきつくしたのもあって効果的な球出しをしにくくなり、更にエスパの攻勢が続いて守備に追われるうちに足が止まってしまったかなと感じました。あとは前述したように長崎の前の4人は結構流動的に動く分運動量が多いので、それにより前の選手が効果的に動いてボールを引き出す動きが出来なくなったのではないかと思います。

6.終盤3バックにした事について

 86分に北爪が足を攣ってしまってプレー続行不可能になったタイミングで、秋葉監督は北爪に代えて吉田を入れ、更に北川を下げて蓮川を投入して3バックに変更しました。この時点で交代枠は1枚残っていましたが、90+3分にはサブに入っていたFWのタンキではなくボランチを宮本に替える選択をしました。

 この一連の交代に関して僕のXのタイムラインでは評価する声の方が多かったですが、「何で勝ちに行かない!優勝する気ないのか!」という批判もそれなりの数見受けれられました。こうした批判が起こるのは理解出来ます。ただ僕は批判するにはあたらないと思ってます。まず3バックにする事が試合をクローズさせるためのものとは限りません。長崎が前節対戦してドローに終わった栃木も3バックでしたから、同じようにシステム上のミスマッチを狙った可能性もあります。それにボールを回しながらも相手がスキを見せたら攻撃を仕掛けるという姿勢は崩しておらず、90+6分には西原がサイドからカットインして出したボールのこぼれ球からフリーの住吉がシュートを放つという場面もありましたよね。この場面1つとっても同点で終わるつもりはなかったと言えるでしょう。一方でもし中途半端に前掛かりになって長崎のカウンターを食らって失点して敗戦してしまったら、それは勝ち点を縮められ長崎に勢いを与える最悪の結果となります。だから秋葉監督は3バックにして仮にカウンターを食らっても失点しないようにリスクヘッジした上で得点を狙い、それで得点出来なくても最低限勝ち点1を積み上げるというやり方を選択したのだと思いますし、その選択が間違っているとは思いません。結果として長崎との勝ち点差を8のままに出来て自動昇格の2位に入る可能性を増やしたわけですしね。そういう考えもあるよというのを汲み取ってくれれば、と思います。気持ちはわかりますけどね。

7.まとめ

 この試合で勝ち点1を積み上げ3位長崎との勝ち点差8を維持した事で、エスパルスは残り9試合で勝ち点17を積み上げる事が出来れば自動昇格を確定させられる事となりました。一方で首位横浜FCとの勝ち点差は4に開きましたが、ウチの消化試合数は1つ少ない上に横浜FCとの直接対決を残しているのでまだ自力優勝出来る位置にいます。ただ今週末からの3連戦で3連勝するのが大前提ですが。その意味で次の山口戦はこの後の試合に勢いを付けるために勝たなくてはなりません。それに向けて最善の準備をして欲しいです。

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