もったいない試合(8/3 仙台戦)
先週末、仙台まで行って来ました。宿泊付きの遠征は4月末の岡山以来、仙台に行ったのは2021年春先のルヴァン杯以来です。金曜に関西方面に出張してそのまま宿泊し翌日に出張先から移動したのであまり時間はなかったのですが、それでも牛タンを食べたり松島に行ったりとそれなりに楽しんできました。
これで試合も勝っていれば最高だったのですが、残念ながら惜敗。しかもタイトルに付けた通り「もったいないなぁ」という言葉しか出ない試合で、試合後は「悔しい」という感情をどこへ持っていったら良いのかに迷う感じでした。しかもその後の五輪女子サッカーでなでしこはこれまた惜敗してしまうし、前日の男子サッカーと合わせて散々な週末となってしまいました。
<明治安田J2リーグ 於 ユアテックスタジアム仙台>
清水エスパルス 1ー2 ベガルタ仙台
1.エスパルスのスタメン
SUB:沖、高木、矢島、成岡、西原、アブドゥル アジズ ヤクブ、ドウグラス タンキ
最終ラインとボランチは高橋以外は前の週に行われたスタッド・ランス戦と同じメンバーとなり、原テル、山原はベンチにも入りませんでした。一方前の4人はリーグ戦と同じ。サブでは成岡、西原と若くてスタッド・ランス戦で印象深いプレーをした2人が入ったのが特徴的ですかね。
2.仙台の戦い方
長くU-17日本代表監督を務めていた森山氏を監督として招聘した仙台は、情熱的な森山イズムを叩き込まれた事でチーム力を上げ、第34節時点でプレーオフ圏内の6位に付けています。システムは4-4-2で、前から厳しくプレスをかけてボールを奪い、奪ったらなるべく早くゴール前にボールを運んでゴールを奪うスタイルのサッカーをしてきます。この成績を受けてクラブも「今季はチャンス」と考えたのかこの夏の移籍ウィンドウでは積極的に動いており、山口から梅木、横浜FMから實藤といった実力者の獲得に成功しています。
ただ中断前はいずれもアウェイながら岡山、徳島に連敗。特に徳島戦は3バックを採用するも機能せず後半から4バックに戻すも立て直せずに完敗を喫していました。このあたりは森山監督も試行錯誤しているのかなと思われました。が、こういう連敗の後の試合ってきっちり立て直してこられる事って多いですよね。更に言えば徳島戦からこの試合まで3週間ありましたから立て直しの期間が十分あったわけです。実際DAZNの中継では前の週に山形とトレーニングマッチをやっていて、それでエロン、郷家の2トップが機能していたのでその布陣でいったみたいです。実際この2人は前で効いてましたからね。特に郷家は。こうやって3週間の準備期間を経て立て直してきた仙台と当たる事になったのは不運と言えば不運かもしれません。
3.試合経過・前半
開始直後から両チームとも激しい球際でのぶつかり合いをみせていましたが、仙台の最終ラインから左サイドのウラへ長いボールが出て、右サイドハーフの有田が反応しSBの真瀬がフォローしてクロスをあげますが、宮本がカット。しかし宮本がカルリーニョスへ繋ごうとしたところをボランチの松井に突っかけられてボールがこぼれ、それを最終的に左サイドハーフに入った中島がシュート。これがゴール隅に入って、エスパルスはわずか4分で先制点を許す事となってしまいました。
これで勢いの出た仙台は更に攻勢をかけます。こちらのボールホルダーに積極的にチェックにいってボールを奪い、奪ったボールを素早く前へ運んで両サイドから攻撃を仕掛け、8分に松井、その直後のCKから高田(いずれもディフェンスがブロック)と危険なシュートを放ちます。15分あたりから少しずつエスパがボールを握る時間を増やしていきましたが、仙台のコンパクトなミドルブロックとそこからのボールホルダーへの激しいチェックの前になかなかゴール前まで持っていく事が出来ませんでした。しかし焦れずにボールを握りながら相手のスキを窺ったエスパは、最終ライン近くへ落ちた乾から相手陣右サイド深くへ侵入した北爪へのパスで仙台を自陣へ押し込み、宮本、北爪、ブラガの3人でボールを回して相手を引き付けたところで、宮本からペナ前まで入り込んだ乾へパス。乾はトラップミスしてしまいましたがこぼれ球が恐らくポケットに侵入しようとした宇野の足元へ。宇野はボールを落ち着かせてから豪快なミドルシュートを叩き込み、エスパが同点に追い付きました。じっくりボールを回しながら少しずつ相手を後ろに下げさせてスキを見逃さずに得点まで持っていった見事なゴールでした。なおこの宇野のシュートがこの試合でのエスパの初シュートでした。
これで勢いを増したエスパは、39分に北爪が相手のスローインをカットして一気に前にボールを運び、乾から北川へのクロスはわずかに合わなかったもののこぼれ球を宮本がシュート。更にそのこぼれ球を北川が押し込もうとしましたが決めるまでには至らず、前半は1-1で終了しました。
4.試合経過・後半
後半も開始から両チームが激しい球際でのぶつかり合いを見せお互いに攻め合う展開が続きました。が、52分にワンツーで吉田のウラを突破されてそこから連続攻撃を浴び、いったんはボールを奪って吉田から乾に渡ったものの、パスの出し先に迷っているうちに真瀬と中島に囲まれてボールを奪われ、そこからのクロスは凌いだもののこぼれ球を長澤にシュートを撃たれ、それがディフレクションしたために権田が反応し切れずに失点。エスパはまたも1点ビハインドとなってしまいました。
この後エスパは反撃に転じ、59分に中央突破からのブラガのシュート、64分にブラガが右サイドを突破してのグラウンダーのクロスにカルリーニョスが飛び込むシーンといった決定機を作ります。が、いずれも決められず、この後選手交代によって更に攻勢を強めようとしますが上手くいかず、一方で仙台がフレッシュな選手を入れて守備の強度を高めていった事もあってなかなかチャンスを作れなくなり、結局1-2のまま試合終了となってしまいました。
5.敗因
まず仙台は連敗で調子を落としていたところをこの3週間で見事に立て直しましたね。更にこの試合にかける気持ちも相当強かったです。足を止める事なく高い強度でボールホルダーに向かってきていたし、奪ってからの攻撃にも迫力を感じました。最後はその気迫に根負けしちゃった感がありますね。
ただエスパが明らかに劣っていたかというと決してそんな事はなく、アウェイながらも真っ向勝負の戦いが出来ていました。シュート数やボール支配率にそれは表れてますし、ゴール期待値に至っては仙台を上回っています。
じゃあ何故負けたのかというと、やらずもがなの失点、サッカー用語で言えば自陣でボールを奪った時に相手のカウンタープレスからのショートカウンターを食らっての失点を2度もしてしまった事に尽きると思います。
まず1失点目は真瀬のクロスを宮本がカットしたものの、そのボールをカルリーニョスに繋いだら後ろから松井にカルリーニョスのボールをつつかれて奪われて、それを繋がれて失点しています。この場面、宮本はカルリーニョスの後ろに松井がいたのは見えていたと思うし、何より自分が本来埋めるべきバイタルエリアを離れていたのですからまずリスクの低い選択をすべきだったと思います。
2失点目も自陣に押し込まれていたところ何とか吉田がボールを奪って乾に渡すんですけど、真瀬と中島に挟まれてボールを奪われてしまい、中島からのクロスのこぼれ球を決められています。ただ、まず吉田が乾にボールを渡したのが1失点目の時と同様明らかな誤りかというと難しいところですね。確かに直前まで仙台が勢いを持って攻めて来てたので外に逃げていったん相手の攻撃を切るのが一番安全なのですが、この時の乾が半身でいつでもボールを受けられる状態だったので、乾にボールを預けるという考えは理解出来ます。で、これを受けた乾がボールを受けて前に持ち出しながらパスの出し先を探すのですが、こっちはNGだと思います。側にいたカルリーニョスに預けて次に受けられるところへ走るか前に蹴り出すかすべきでした。更に2人をかわすべく切り返すわけですが、これも場所を考えるべきでした。いくら自分の技術に自信を持っていたとしてもやってはいけなかったですね。
という事で、2失点とも自分達の判断ミスによって奪われたもので、本当にもったいない失点でした。この判断ミスがなければとどうしても思ってしまうし、その意味で本当にもったいない試合だったと思います。まあ乾は自らミスを認めるポストをしてましたし、オフ明けのミーティングでこれらの場面について話し合いはされていると思うので、次節以降に同じ過ちを犯さない事を願います。
6.気になった事
この試合の敗因としてはこれらの判断ミスに尽きると思ってますが、この他気になった点を幾つかあげます。
①左サイドの機能不全
この試合のスタメンのうちSBはいつもの原テル、山原ではなく北爪、吉田だったわけですが、それにより両サイドからボールをどう前に運ぶかでいつもより苦労してました。特に左サイドは吉田のところでボールが詰まってしまう事が多かったですね。ボール保持時に吉田にボールが渡った時は必ず仙台の選手が寄せてきてボールを奪おうとしてきました。仙台の攻撃時、特に前半はこちらの左サイドを狙ってきていたので吉田はその対応に追われていて、そのせいか吉田自身もプレーに精彩を欠いていました。その影響でなかなかカルリーニョスも良い形でボールを受けられず、最後まで左サイドは思ったように機能しなかったです。山原の存在の大きさを改めて感じました。
②選手交代が機能しなかった
前述したように後半エスパは再びリードを奪われても焦れる事なく反撃し、59分、64分と決定機を作りました。が、64分の決定機の直後にカルリーニョスが矢島と交代し、更に73分に北川、ブラガに代えてアブドゥル アジズ、西原、82分に吉田、乾に代えて高木、タンキをそれぞれ入れたのですが、結局64分以降に決定機を作れずに終わってしまいました。矢島が入った事でセットプレーの期待度は上がりましたしあちこち顔を出してボールを引き出そうとしていたのも良かったです。が、アブドゥル アジズに関しては北川と違って彼をどう活かすかがまだ手探りな感じで、結果としてあまり機能しませんでしたし、西原もボールを持った時に必ず前に2人立たれていたのでああなるとまだ厳しいです。更にタンキが入った事でロングボールをタンキに当てようという意思統一はされた感じでしたが、焦りもあってアバウトな攻撃に終始してしまいました。高木は左SBとして頑張っていましたが、彼と矢島以外は率直に言ってこの日は期待外れでしたね。
こうなってしまった要因として1つは前述したようにアブドゥル アジズをどう活かすのがいいのかが手探り状態であるというのはあると思います。後はメンタル面ですね。特に今季のウチは先制されて追い付いたり逆転したりした試合が8試合中わずか1試合で負け試合をひっくり返したり追い付いたりしたという成功体験が少ないからどうしても焦りが生じてしまって、その分プレー精度が低くなってしまうのではないかと思います。これについては焦るなと言われても難しいのかもしれませんが、何とか焦れずに相手の穴を見つけるタフさを身に付けて欲しいところです。一方で僕はそもそも残り15分でビハインド状態となっている時にどういう布陣を敷こうという狙いの下でサブメンバーが選ばれている感触がないんですよ。少なくともこの試合に関しては。リードした時の交代策は思い浮かぶんですけど。そう感じた理由が西原が起用された事で、彼はリードされて相手が引いてしまった時でも自分の力を発揮できるかというとまだそこまでではないんじゃないかと思っているんです。ボールを持ったら頑張って仕掛ける姿勢は見せていますし、期待の星なのでこういう評価をするのは申し訳ないのですが。まあ他の選手達のコンディションまで僕は知りませんから事情があって今回のメンバー編成になったのかもしれません。ただ負けている時の選手交代が機能したのって横浜FC戦くらいしか思い浮かばないので、この点でも秋葉監督には物足りなさを感じています。勿論この後の試合で今の評価を覆すような選手起用をしてくれる事を祈ってますけどね。
7.そんなに悪い出来ではなかった
などといろいろ苦言を述べてしまいましたが、何日かしてからDAZNで観直した時の印象は「そこまで悪い出来ではなかった」です。前半仙台の激しい攻守に苦しめられながらも少しずつボール保持の時間を増やし、左サイドが機能しない中でも少しずつボールを前に進めていったんは同点に追い付いています。前半先制された試合で前半のうちに同点に追い付けたのは今季初めてです。後半再びリードされても反撃を試み、59分、64分と決定機を作れたのも評価出来ます。特に59分は宮本が相手2トップの間に立って住吉からボールを引き取ってすぐに前にいた乾に渡し、そこから北川→ブラガ→乾→ブラガと繋いで仙台のブロックの真ん中をぶち抜いた見事な崩しでした。他にも真ん中でボールを回して右サイドに展開して北爪のスピードを活かそうとする場面もあったし、アタッキングサードへボールを運ぶところはスムーズな連携を見せてくれました。守備に関しても相手のショートカウンターには苦しめられましたが、4-4-2でブロックを作っての守備に関してはある程度機能していたと思います(もう少しこまめにラインの上げ下げをした方が良いと思いますが)。個人で見てもエスパデビュー戦でいきなりゴールを決めた宇野の働きぶりは大きな成果ですし、そこまで悲観する必要はないと思います。勿論35試合で7敗というのは多過ぎではありますが、それは選手・スタッフも良くわかっていると思いますし、僕如きが挙げた敗因や気になる点もある程度把握しているでしょう。次節以降それらの懸念事項を払拭して、今季の目標に向けた道を切り開いてくれる事を期待したいです。
8.まとめ
次節はホーム・アイスタ日本平での群馬戦です。相手はJ2残留をかけて必死になってぶつかってくるでしょう。が、こちらにも今季是が非でも達成しなければならない目標があります。その目標達成のためにも要塞アイスタ日本平で是非勝ち点3を勝ち取って欲しいです。
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コメント
少なからず負ける試合ではなかったかな?と言う印象です。
自滅なんですよね。しかもうまく行っていない時間帯に、ミスからの2失点。結果論だし仕方ないのかもしれませんが、DFライン3人代わったのも後ろバタバタした影響もあったのかも。
山原、亮太郎いればまだ違ったのでしょうけど、ジェラ、豊の左がかなりバタバタしてたので、ジェラではなく践だったらビルドアップがもう少しスムーズだった可能性が。
他の試合も悪い時間帯に無理に繋ごうとするシーン見受けられるので、まぁこうなるよね?と言う試合でした。
投稿: はすき | 2024年8月 8日 (木) 10時10分