酷暑の中で掴んだ勝ち点3(8/17 甲府戦)
先週土曜(8/17)は甲府戦を観にアイスタ日本平へ行って来ました。
台風は過ぎ去った後だったので雨の心配は殆どなかったのですが、とにかく暑かったです。雲一つない好天で富士山もよく見えましたが、日差しがメチャクチャ強かったです。湿気に関しては日が出ている間は「先週よりマシかな」と思っていたのですが、日が暮れるに従って湿気がどんどん増していって、試合が始まる事には蒸し風呂状態で汗が止まりませんでした。そんな中90分間走り続けた両チームの選手達には「凄い!」という感嘆の言葉しか浮かばないですし、そんな環境下で掴んだ勝ち点3はエスパにとって本当に価値のあるものだと思います。
<明治安田J2リーグ 於 IAIスタジアム日本平>
清水エスパルス 3ー0 ヴァンフォーレ甲府
1.エスパルスのスタメン
SUB:沖、蓮川、吉田、矢島、西原、中村、アブドゥル アジズ ヤクブ
2.甲府の戦い方
篠田さんの下で今季こそJ1昇格を、と意気込んでいた甲府は、リーグ戦の出だしは悪くなく、4月中旬まではプレーオフ圏内の順位を維持していました。しかしACLの決勝トーナメントに進出していた分他のチームより早めに新シーズンに向けて準備しなければならなかった事の影響もあってか怪我人が多数発生し、その影響で勝ち点が伸ばせなくなって順位が下降。更に第15節の千葉戦以降9試合勝ち無しという泥沼に陥って順位も14位まで落ちてしまったため、7/2に篠田さんは解任されてコーチの大塚さんが監督に昇格しました。その次の試合も勝てずに10試合勝ち無しとなってしまいましたが、第24節では長崎を相手に後少しで勝利というところまで追い詰め、その後の2試合は連勝して持ち直しています。
システムは篠田さんが解任される前から3バックに変更していて、現監督の大塚さんもそれを踏襲しています。戦術としては、今回戦った限りではどちらかというとまずブロックを作ってカウンターを狙うという篠田さんの時よりもアグレッシブになった印象で、前プレを以前よりも積極的にやってきてました。で、奪ったボールをなるべく早く前に送って仕留めるという狙いは変わらないもののボールを奪う位置が高くなる分カウンターの威力が増していて、それが前節の藤枝戦の完勝に繋がったんじゃないかと思います。何せ前線にはウタカ、アダイウトンという強烈な個を持った選手がいるし、その恩恵なのか攻撃の数字はいいですからね。
監督が代わってからの甲府には以上のような印象を持っていましたが、この試合ではその変化した部分をより先鋭化させて挑んできました。
3.試合経過
試合開始15分間での得点が多い甲府はこの試合でもそれを狙ったのか立ち上がりから前プレをガンガン仕掛けてきて奪ったボールを素早く前に送る事で、積極的な戦いを挑んできました。5分には住吉との競り合いから鳥海がシュートを放ち、10分にはクイックリスタートから抜け出したウタカがループシュートを放つなど危ないシーンを作られます。どうにか凌いで少しずつボールを握る時間を増やしていったエスパでしたが、甲府のボールホルダーへの寄せも厳しく、試合は互角か甲府やや優位の展開でした。しかし32分、ブラガ→乾→山原と繋いでからの山原のクロスをカルリーニョスがゴール前で合わせて先制。前半はこのまま1-0で折り返しました。
後半、甲府は開始から二人選手を変えて攻勢をかけようとしましたが、45分42秒、エスパゴール前での権田とアダイウトンとの接触がアダイウトンの権田に対する危険なプレーととられてアダイウトンは一発退場。エスパが数的優位となります。甲府も諦める事なく前からプレッシャーをかけようとしますが、57分に山原のシュート(クロス?)のこぼれ球をブラガが押し込んで2-0。その後も試合を優位に進めたエスパは90分にも途中交代で入った矢島とアジズのコンビにより3点目をゲット。結局3-0でエスパルスが勝ちました。
4.劣勢からの決定的なピンチを救った高橋のプレー
まずは試合経過を簡単に(?)振り返りましたが、この試合は色々な事がありましたので、改めて4つの項に分けて試合を振り返ります。
試合開始から両チームともアグレッシブな入りをしましたが、それがより鮮明だったのは甲府でした。キックオフからボールを前に出して猛然と攻めかかり、その後エスパにボールを奪われてもそこから北川へクサビが入った際に数人で囲い込んでボールを奪いに来ました(ファウルでしたが)。その後も3-4-2-1もしくは5-4-1のブロックを高めに保った上でこちらの最終ラインに前プレをかけて高橋、住吉のフィードミスを誘ったり、3分、6分と立て続けにCBからボランチへのパスをカット(奪ったのはいずれもヘナト)したりしてエスパに思うような攻撃をさせず、奪ったボールを早めに前に送って、5分の鳥海のシュートなどのチャンスを作っていきました。
中でも危なかったのが9分のシーン。右CBの関口が真ん中にボールを持って入ってきたところを北川が倒してファウル。関口はすぐリスタートしてウラに抜け出そうとしていたウタカへ浮き球のパス。権田が飛び出しますがウタカが先にループシュートを撃ってボールはゴール方向へ。しかし高橋が猛然とボールを追いかけて間一髪でボールをかき出してゴールを許しませんでした。
これは僕達からするとこのプレーを観れただけでも金払って観に来た価値があると思いますし、高橋はこのプレーに対する臨時給を貰ってもいいと思います。これが入っていたら勝てたかどうかも怪しいですからね。試合の流れを左右するビッグプレーでした。
5.少しずつ流れを引き寄せた15分からの30分間
その後11分に住吉に対してボールを奪おうと寄せていった関口が住吉を倒してファウルをとられ警告を受けます。その後エスパが少しずつボールを握る時間を増やしていきました。その中で効果的だなと感じたのが宮本、宇野、乾のポジショニングですね。ボランチの宮本、宇野のどちらかもしくは両方がウタカと甲府のダブルボランチの間にポジションをとり、残りは甲府の中盤と最終ラインの中間にポジションをとります。で、CBからこちらのボランチにボールが入ると当然相手ボランチが寄せてきますが、寄せ切る前に少ないタッチで前にいる選手(主に乾)に出して、そこから前の北川らと連携して更にボールを前に運んでいきました。甲府のダブルボランチのヘナトと中山はしっかり真ん中を締めているので決して簡単ではないと思いますが、この3人が流動的にポジションを入れ替えつつトライアングルの形を崩さないですし、そこにカルリーニョスとブラガが中へ絞ってパス回しに絡んでくるし、更に北川もいるので甲府としては的を絞りにくかったと思います。更に甲府の2シャドウの鳥海、アダイウトンと最終ラインの間のスペースも乾やブラガに入り込まれていたのも甲府にはきつかったと思います。とはいえ完璧だったわけではないし甲府も何とか間を通させないようにはしていたので、度々パスを引っかけられてカウンターを食らってはいました。28分のアダイウトンのシュートがクロスバーに当たったシーンはその典型ですね。しかし辛抱強くボールを回していく事で甲府に思うように前でボールを奪えないようにした結果が32分の先制点に繋がりました。
この場面、乾が相手陣でボールを奪われてそのボールを甲府が前に付けようとしたのですが上手くいかずに高橋に回収されたところから始まります。高橋はセンターラインまで落ちてきてフリーだったブラガにパス。ブラガはボールを少し前に持ち出してから北川に斜めのクサビのパス。甲府のダブルボランチがボールを奪おうと北川に寄せますが、北川はダイレでブラガにボールを返し、それを再びフリーで貰ったブラガは今度は左にいた乾へパス。乾はゆっくりとボールを前に持ち出してから後ろから上がってきた山原へパス。山原が絶妙のクロスをダイレで上げるとカルリーニョスがこれを合わせて先制、となりました。
とにかく何度見ても綺麗な崩しなのですが、これはその前の時間帯から流動的に動きながら辛抱強くボールを回す事で甲府にボールの取り所、選手の掴み方を迷わせたのが効いたのだと思います。中でパスを繋がれるとやはりイヤですからね。こうして見直していくと甲府のわずかなスキを見逃さなかったというよりは甲府を少しずつ混乱させる事でスキを作った結果生まれた得点と言えるのではないかと思います。
6.試合の流れを決定付けた退場シーン
ただ先制されたものの甲府の戦意は全く落ちておらず、後半開始から2人の選手交代を行いました。そして戦い方もウタカに代わって入ったマクーラに長いボールを当て、そのこぼれ球を拾って攻撃を仕掛ける形に変えてきました。そして45分42秒、関口が後ろからロングボールを入れ、マクーラが高橋と競り合いながらボールを後ろへ落とし、これに反応したアダイウトンが前に飛び出した権田と接触。このアダイウトンのプレーが著しく危険な行為とみなされレッドカードが出されました。
現地で観た時は明らかにファウルだとは思ったもののレッドカードが出された事に対しては「あ、そうなのか」って印象でした。後でプレーを観返しましたが、主審によって、或いは主審が観た場所によってはレッドじゃなくてイエローに留まるような微妙な判定だったと思います。が、危険なプレーだったのは明らかです。アダイウトンの脛あたりが権田の頭に当たってますし、当たり所が悪ければ権田の選手生命も脅かすようなプレーですから、レッドが出されても仕方がないと思います。甲府としては後半攻め方を明確にして何とか同点に追い付こうとしていた矢先の退場劇だったので納得いかないと感じるのもわからなくはないですが、少なくとも「アダイウトンの方が先にボールに触ったのだからノーファウルだ!」とか「権田のシミュレーションだ!」とかいったアホな言いがかりは止めて頂きたいです。
7.数的優位の中での残り45分
これでエスパが数的優位となりましたが、数的優位を活かせずにドローとかに持ち込まれるのは良くある事ですから、決して楽観視は出来ませんでした。しかし57分、ブラガがこぼれ球を押し込んで2点目を奪ってより優位に立つ事が出来たのが大きかったですね。この場面はカルリーニョスがキレキレのドリブルで持ち込むところから始まって、右の北爪からのクロスが左へ流れて乾がキープ。この時の乾のキープが何ともいやらしい感じで、村上としたら寄せるのは怖いでしょうね。そこへ山原が走り込んで乾がそこへ出すのですが、その後の山原のプレーは最初はシュートだと思っていたのですが、よく見るとあれはニアでフリーでいた北川へのクロスでしたね。1点目もニアで競る事でカルリーニョスが走り込むスペースを作ってますし、この時のポジショニングを見てもやはり北川は要所で効いてるなぁと思います。
2点目をとられても甲府は諦める事はなく、システムを4バックにして何とか反撃に出ようとしましたが、この後もエスパの方がチャンスを沢山作り、90分に途中出場の矢島からのスルーパスを同じく途中出場のアジズがゴールへ流し込んで3点目。これで勝負ありとなりました。エスパ目線で言えばもっと点を取れたよなという気持ちはあります。60分の北川とか67分の乾とか、ね。でもシュートが決まらなかった事以外は観ていて楽しいプレーを観る事が出来たので、観に来て良かったと思いました。
8.まとめ
試合の入りで甲府に上回られて決定機を作られた事やパスカットからのカウンターを複数回食らった事、後半の決定機逸といった反省点はあります。特にパスカットからのカウンターに関しては仙台戦でも食らってますから、秋葉監督が仰った通りより丁寧なプレーが求められるところです。が、調子を上げてきた甲府に対してきっちり勝ち点3をあげた事、内容も娯楽性の高いものだった事は十分評価できるものでした。「やはり要塞アイスタでの清水は強い」との印象を他チームに改めて与えたでしょうしね。
ただこの後はアウェーでの試合が2試合続きます。次節当たる鹿児島は残留争いから抜け出そうと必死ですからウチ相手にも死に物狂いで来るでしょう。難しい試合になるでしょうが、しっかりと準備してアウェーでも勝ち点3を持ち帰って来て欲しいです。
P.S この試合では昨季まで5年間エスパに在籍したヘナト アウグストが久しぶりにアイスタで敵としてプレーしました。それ自体が感慨深いですし途中交代でベンチに下がる場面が非常にエモーショナルなものでしたのでこれについても触れたいのですが、更に記事が長くなっちゃうので稿を改めます。
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