終わってみれば5連勝(5/3 栃木戦)
1.エスパルスのスタメン
SUB:沖、北爪、吉田、西澤、松崎、西原、ドウグラス タンキ
スタメンは右SBに原テルが起用された以外は前節と同じ。サブも吉田がスタメンから回っただけであとは同じでした。乾は今節もメンバー外でしたが、秋葉監督としては無理はさせないという事でしょうね。
2.栃木の戦い方
栃木は今季から田中誠さんが就任。ただJクラブのトップチームの監督経験がないためか、ヘッドコーチに昨季まで金沢の監督を務めた柳下正明さんを据えています。システムは3-3-2-2で、昨季までの粘り強い守備に加えてより得点力を高めるべく「ゴールへ向かう回数を増やしたい」との抱負を就任記者会見で語っています。開幕当初は3~4節に甲府、横浜FC相手に連勝するという上々のスタートを切りましたが、7節以降の6試合は3分3敗と勝ち無し。中でも8節は千葉に0-8で大敗するなど失点が多くなっているのが課題となっていました。
このため栃木はこの試合に向けてフォーメーションを3-4-2-1に変更。ダブルボランチにする事で真ん中のスペースを埋め、特に北川は徹底して抑えるようにしてきました。出来るだけ0-0の時間を増やしてロングボールを使ったカウンターで得点を奪って勝ち切る事を狙ってきたと思います。
3.最高の立ち上がり
試合開始直後は気合を入れて試合に臨んだ栃木の方が出足がよく、2分に神戸がロングスローのこぼれ球を叩いて際どいシュートを放って早くもエスパゴールを脅かします。しかしエスパも直後の4分に右サイドからボールを繋ぎ、ゴール前の密集のウラへ抜けようとした宮本にカルリーニョスがスルーパスを送り、それを受けた宮本がニア上を狙ったシュートを放ちます。それにより得たCKはいったん弾かれましたが、こぼれ球を右サイドに展開し、これを受けた矢島から北川→矢島→住吉→矢島とダイレでボールを繋いでペナ内に侵入し、そこから右足で見事なコントロールショット。これがゴールに吸い込まれエスパが先制しました。矢島のシュートそのものもさる事ながらペナ内ヘワンツーを2回使って侵入するところが綺麗でしたね。
勢いにのったエスパは8分、左サイドでつないだボールを中村から右のハーフレーンにいた原テルへ展開。原テルは前に持ち出した後右に張っていたブラガへパス。ボールを受けたブラガは中へカットインし、DFと競り合いながら左足でシュートを放つと、これがゴールに吸い込まれて早くもエスパが2点目をあげました。ブラガは仙台戦でも左足でゴールを決めているから恐らく両足でシュートを打てるのですね。これは大きな武器だと思います。
4.ロングボールに苦しめられた30分
試合開始早々にいきなり2点先行されてゲームプランを完全に壊された栃木でしたが、決して気持ちを切らす事なくエスパに対峙しました。最終ラインの5人とボランチの2人でスペースを埋めてエスパの攻撃を撥ね返し、ボールを奪ったら早めに2トップの宮崎、大島をウラへ走らせるボールを入れトップ下の南野にフォローさせる事で何とかエスパの守備にスキを作らせようとしてきました。ただサイドはどうしても栃木にとって数的不利になるのでSBはある程度捨てる形となり、結果として両SBはボールを持つ時間が増えてきたのですが、2点とって少し気が緩んだのか少しずつ前の選手のウラへの動きが少なくなり、結果として次第にエスパは攻めあぐねるようになりました。
こうした膠着した試合の中でエスパの方がスキを与えてしまいます。24分、ハーフウェイラインでエスパの攻撃を止めた栃木がエスパゴール前のFW大島へロングフィード。これははじかれますがこぼれ球を拾った神戸がWBの大森とパス交換した後で斜めにウラへ飛び出そうとした大島へ浮き球のパス。これを受けた大島が大森へ預けると大森はダイレでクロスを入れ、原が何とかクリアしようとしましたがこれが南野の方へこぼれ、南野がこれをボレーで叩くと山原に当たってボールがゴールへ吸い込まれ、栃木が1点を返しました。まあエスパの選手2人に当たって栃木にとってラッキーな方向にずれたわけで、逆にウチにとってはアンラッキーなゴールだったと思います。ただブラガの戻りが遅い上に自分の対面の一人である大森をフリーにしてしまった事も影響しましたね。ちゃんと大森について楽にクロスを上げさせないようにできれば違ったと思うので。ブラガは凄く真面目な選手で守備もさぼらずやる選手ですが、まだ日本の守備のやり方を完全に習得したわけではなくこれまでも後ろの吉田にいろいろ言われていたみたいなので、このあたりは課題でしょうね。また原テルが高橋が大島についていった時に高橋の穴を埋めるのが遅れたのもまずかったですね。
これで元気の出た栃木はより勢いを持って攻撃を仕掛けてくるようになりました。エスパも再び突き放すべく前に出ようとしますが、栃木がエスパ最終ラインのウラへ執拗にロングボールを入れてきたため対応して後ろに下がらざるを得ず、次第に全体が間延びして中盤に大きなスペースを栃木に使われるようになり、34分の大森のクロスに宮崎があわせようとする場面などを作られるようになってしまいました。守備陣としては「また失点して同点にされてはまずい」と思うでしょうし、攻撃陣としては「何とか前プレでボールを奪って攻めよう」と思うでしょうから無理もないとは思うのですが、ちょっと良くない展開と雰囲気の中で前半を終了しました。
5.よりパワーを持って攻め込まれた45~70分
ハーフタイムで(恐らくは)最終ラインを前に上げてコンパクトにして戦う事を確認したエスパは、後半開始からボールを握る時間を増やし、54分に住吉がゴール前へボールを運んでからのパスを受けた北川がこの日初めてのシュートを打つなど攻勢に出ます。しかし全体を高く保つ事は相手にもスペースを与えるわけで中盤のブロックを突破されるとそこを使われる事になります。実際後半開始早々には南野にボールを運ばれてシュートを打たれています。更に栃木は59分に2トップの宮崎、大島を矢野、イスマイラというフレッシュかつよりパワーのある選手に代えて前への圧力を強め、それにより勢いを増した栃木は63分にセットプレーからラファエル、65分にイスマイラにあわやというシュートを打たれてしまいます。そして67分が一番のピンチで、サイドで住吉に競り勝った(?)イスマイラが中へパスを入れて南野がシュート。これは原テルがブロックしますがこぼれ球を大森にフリーでシュートを打たれてしまいました(枠外)。この時間帯は栃木の前からの守備に嵌められていて非常に危険な時間帯でした(ただイスマイラのチェックは住吉の背中にいっているように見えたんですけどね)
6.選手交代で流れを引き寄せた70~90分
エスパにとって最大のピンチがおきた直後、栃木は南野、大森に代えて青島、森を投入しました。よりフレッシュな選手を前に入れようとしたのでしょうが、南野はずっと危険な存在だったのでウチにとっては助かりました。一方のエスパは北川、ブラガに代えてドウグラス タンキ、松崎を投入しましたが、このドウグラス タンキの投入が効きました。北川は決して調子が悪かったわけではありませんでしたが栃木の最終ラインのラファエルらに徹底的にマークされ、なかなか真ん中でポイントを作る事が出来ませんでした。それに対してドウグラス タンキは浮き球をスタンディングの状態でも収めてくれますしイーブンボールもリーチを活かしてマイボールにしてくれます。実際に72分頃にドウグラス タンキがルーズボールをマイボールにして前にボールを運んだあたりから選手達が自信を持って前に上がるようになってきました。一方で秋葉監督は77分にブラガに代えて吉田を投入。原テルを真ん中にずらして3バックとして栃木のカウンターに対する備えを作りました。
そして78分、栃木のボランチ間のパス交換がずれたところをカルリーニョスがカット。このルーズボールをマイボールにしたドウグラス タンキが前へ。ペナの手前で神戸に倒されてボールをロストしましたが、その後のボールを受けた青島に対して吉田が猛然とゲーゲンプレスを仕掛け、たまらず青島がサイドへ横パスを出すと、これを狙っていた山原がカットして一気にボールを運んで左足を一閃。これがゴールに吸い込まれてエスパが貴重な追加点を奪いました。ボールロストした後にすぐ切り替えてゲーゲンプレスをかけ、奪ったボールを最速でゴール前に運びゴールを陥れるというチームの約束事を体現した見事な得点でした。
このゴールで流れを完全に引き寄せたエスパは手を緩める事なく追加点を狙い、85分のドウグラス タンキのシュートなどの決定機を作っていきます。そして87分、スローインからのボールを松崎がボールを運びポケットに侵入したカルリーニョスヘパス。カルリーニョスがこれをヒールで後ろへ流すとボールは松崎の元に。松崎がこれを右足でゴールへ流し込んで4得点目を奪取。この後も栃木を押し込み続けたエスパルスが4-1で勝利しました。
7.まとめ
結果的には「快勝」と言っていいのでしょうが、こうやって振り返ってみると確実に優位に立てていたのは試合全体の半分以下であり、点差ほどの差はなかった事がわかると思います。前半2点先行しながら自らペースを乱した事と後半相手の勢いに押されてしまった事は反省材料でしょう。特に前者についてはちょうど明日(5/6)戦う群馬が前々節に長崎相手に2点先行されながら1点返して最後まで食い下がっており、同じ事をすれば今度こそやられます。今度はアウェイですしね。とはいえ90分間フルスロットルで相手を押し続けるのは簡単ではないので、この試合の1失点目に繋がった守備の緩みは起こさずに試合を支配し続ける術を手に入れるのが理想ですかね。
一方でそんな苦しい試合を何故勝ち切れたかというとやはり秋葉監督が仰るようにシーズン前に90分間走り続けられるだけのトレーニングをしてきたからというのが大きいと思います。あとは試合途中から出て流れを変えられる選手が出て来たのも一因です。この試合であげるならドウグラス タンキですかね。これらの要素によって紙一重の試合を5試合続けて勝ち切れたのだと思います。
ただこの調子で紙一重の試合ばかり続けていたらどこかで息切れする可能性もあります。これを防ぐためにはこれまでの試合で出てきた課題を少しずつ潰していく必要があります。勿論選手達もスタッフの方々もそれは自覚されていて日頃の練習を通して課題克服の努力はされていると思いますので、それを通してチームが更に強くなっていくのを楽しみにしています。まずは明日(5/6)の群馬戦、頑張って欲しいです。
8.追記・野堀主審のジャッジについて
あまりこういう事は書きたくないのですが、この試合の主審を務めた野堀さんのジャッジは良くなかったなと思います。コンタクトプレーをあまりにも流し過ぎているように感じました。まああまりに細かく笛を吹いて試合を切ってしまうジャッジは好きではなく、適度に流してくれた方が良いと思いますが、この日はいくらなんでもと思ってしまいました。選手が怪我しては元も子もないので。でもこういうジャッジの塩梅は難しいですね。
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