我慢の勝利(4/7 甲府戦)
1.エスパルスのスタメン
SUB:沖、蓮川、北爪、松崎、乾、西原、北川
スタメンで前節から変わったのは左サイドハーフを西原から矢島に代えたのと、トップを千葉からカルリーニョスに代えたこの2点で、それ以外は変更なし。一方サブにはここ2試合怪我で戦列を離れていた乾と北川が名を連ねました。これは甲府には一定の圧力を与えたのではないでしょうか。
2.甲府の戦い方
篠田監督が就任して2年目の甲府はここまで4勝2分2敗。戦い方は前からプレスを積極的にかけるというよりは4-4のコンパクトなブロックを作ってそこに引き込んで、ボールがブロックに入ったところで奪ってカウンターを仕掛けてゴールを奪い取るというスタイルという印象です。だからボール支配率は決して高くないんですけど「ここ!」というところで人数をかけて攻め切る事が出来るチームで、昨季のアウェイでの試合はまさにその形にはまって敗れたわけです。更に今季は前でボールをキープできるファビアン ゴンザレスと前への推進力が武器のアダイウトンが加わって、非常にウチにとってやりにくいスカッドになっている印象を持っていました。
3.試合経過
試合は開始からエスパルスがボールを握り、甲府がブロックを作ってボールを奪う機会を窺う展開となりました。エスパはボール保持時はCB2人に加えてボランチのどちらか(主に白崎)の3人でビルドアップを開始し、慎重にボールを回しながら甲府のブロックの真ん中に付けるスキを窺いますが、甲府はブロックの真ん中をしっかり締めていて、たまにカルリーニョスやルーカス ブラガにボールが入ってもすぐチェックをかけてくるため中でボールが収まらず、そうやって ボールロストしては甲府にカウンターを食らう事の繰り返しとなってしまいました。ただロストした時の所謂ネガトラの意識も高くて、しっかり戻って相手の攻撃を遅らせたりボールを奪ったり出来ていたのでそれほど危険な場面は作らせません。こうした膠着した試合展開のまま0-0で前半を終えました。
後半の入りも基本的には同じだったのですが、甲府が49分、56分とCKから決定機を作り、ムードは甲府に傾いていきました。篠田監督もそれを感じたのか59分にアダイウトンを投入。その後61分、68分にそれぞれアダイウトンから三平へラストパスが入って決定的な場面を作るなど、このあたりはいつ失点してもおかしくない雰囲気が漂っていました。しかし秋葉監督も61分、67分に北川、乾らを投入し、その効果が70分くらいから出始めて試合はほぼ互角の展開に。そして90+1分、右からのCKはいったんはクリアされたものの、そのボールを乾がダイレで中へ。乾のモーションを見て「来る!」と確信した住吉がニアへ動き直して乾からのボールをヘッドで押し込んでエスパが先制。その後の甲府のパワープレーを凌いだエスパルスが3試合ぶりの勝ち点3を手にしました。
4.途中まで上手くいかなかった原因
何とか勝ちはしたものの70分頃までは思うようにいきませんでした。エスパと甲府のどちらがより試合前のゲームプラン通りに試合を進めたかといえば、明らかに甲府だろうなと思います。もちろんエスパも無策だったわけではなく、CBの2人だけでなくボランチの1人が必ず落ちてビルドアップをスタートさせ、サイドにボールが入ったところでボランチのもう1人(主に宮本)がフォローに入りつつ真ん中が空いていれば中へ差し込む形を見せていました。で、中にボールが入ったところで内に絞ったサイドハーフやトップ下とが連携してチャンスを広げていくというのを狙っていたのだろうと思います。
ただ甲府の4-4のブロックは堅くて簡単に真ん中を空けてくれないので、なかなかボールを前に入れられません。そうなると前の選手としてはボールを触りたいからつい降りてきちゃうわけです。特にこの日トップ下で先発した中村はボランチが本職だから前でボールを引き出す事には慣れてないですし、左サイドハーフで先発した矢島も本来サイドの選手じゃないのでサイドやハーフレーンで待つよりボールに寄っていってしまう。トップで先発したカルリーニョスも本来は中盤のアタッカータイプです。言ってしまえば適材適所の配置じゃなかったので、結果として中村や矢島が後ろへ落ちてしまうから、せっかく真ん中にボールを差し込む事が出来ても周りに味方が少ないからあっさりボールを奪われてしまう事を繰り返してしまったという事ではないかと思います。
では何故秋葉監督がこのスタメンを選んだかについては、当然ながらよくわかりません(汗。これもありていに言ってしまえばこの日スタメンもしくはサブだったメンバー以外に甲府戦で戦力になりそうな面子がいなかったという事ではないかと想像してます。西澤、成岡、川本あたりは監督を見返す奮起を期待したいところです。また「最初からゲームプランとしてボールを支配して相手を疲れさせて後半の乾、北川の投入で勝負をかけるつもりだった」という意見が試合後のTLでありました。確かにそれもあり得るかと思いましたが、後半に矢島と中村のポジションを入れて矢島をトップ下に入れたのを見ると、やはり前半の出来は秋葉監督にとって誤算だったんじゃないかなと思います。勿論後半途中まで点をとれなかったら攻撃的な選手を入れて勝負しようという考えはあったと思いますが。
5.勝ち切れた要因
このように準備した形がなかなか機能しなかった中で最後の最後に勝ち切れた要因は2つあると思います。
①相手に先制を許さなかった事
まずは守備陣が頑張って甲府に得点を許さなかった事が大きいですね。特にCBの住吉の働きは見事でした。ファビアン ゴンザレスとバチバチやり合って自由にさせなかったし、カウンターになりそうな場面でいち早く戻ってボールを奪ってくれました。特に45分、エスパのCKの流れでボールを奪われてカウンターを受けそうになったのを住吉が必死に戻って相手ボールにチャレンジしてピンチの芽を摘み取ったのは見事でした。こうした守備時のビッグプレーに加えて決勝点も奪ってくれたのでどうしても住吉に注目が集まりがちなんですけど、相方の高橋も良かったです。住吉と共に最終ラインの壁になってくれました。特に68分頃にアダイウトンに右サイドを突破されてスペースにグラウンダーのクロスを入れてそこに三平が入ってきたんですけど、高橋がいち早くそのスペースに入って三平にシュートを撃たせませんでした。現地で観ていた時は「何でシュートを撃たなかったんだろう」と友人と話していたのですが、改めて見返してみると高橋が完全にシュートコースを潰していましたね。見事な対応でした。
そうやって両CBが身体を張りSBの山原、吉田(途中から北爪)が彼らをサポートしても決定機は作られたわけですが、この日も権田がそれを防いでくれました。49分のCKからファビアン ゴンザレスが落としたこぼれ球から三平がシュートを撃った場面、56分の同じくCKからのヘディングシュートのいずれも決定的な場面でしたが、権田が両方とも止めてくれました。彼の存在はこの日も大きかったですね。
②選手交代が効果的だった事
2つめは後半の選手交代ですね。まず61分に白崎と吉田に代えて北川と北爪を入れますが、これによりトップだったカルリーニョスが左サイドハーフに、左サイドハーフだった中村がボランチに移りました。次に68分にルーカス ブラガと矢島に代えて松崎と乾を投入し、この交代が効いて70分過ぎくらいからエスパが甲府ペースだったのを五分五分の展開に持っていきました。それでも点が入らないと見るや80分に疲れの見えたカルリーニョスに代えて西原を投入。これにより両サイドがスタミナ十分でかつ積極的に仕掛けてくるアタッカーとなり、前の方では北川が何度もウラへ動き出してボールを引き出し、真ん中では中村、宮本がボールを左右へ散らし、その中で乾があちこちに顔を出して攻撃のリズムを作っていくという配置が出来上がりました。さすがの甲府も終盤は疲弊していたでしょうから、この配置をとったエスパにジャブを打たれ続けるのは辛かったでしょう。前節は選手交代の遅れが批判の的となった秋葉監督としては汚名を返上した形となりました。
この選手交代が実を結んで最後の最後に勝ち切れたわけですが、乾の印象が強烈なせいか「やっぱり乾がいないとダメなのか」というネガティブな意見も見られます。確かに乾が攻撃のリズムを良い方向に変えたのは事実ですが、試合を観返してみると「それだけじゃないよな」と思えるようになりました。よくよく見ると試合終盤の選手の配置って大分、千葉、秋田相手に連勝した時と同じなんですよね。この3連戦でもこの日と同じように選手それぞれが自分の役割を遂行したから勝てたわけです。つまり乾が軸ではあるけれど他の選手達の働きもあってこその勝利だと思うので、変に「やはり戦術乾かよ」と卑屈に思う必要はないんじゃないかなと思っています。
とはいえ乾が別格なのは確かですよ。特に住吉へのラストパス、浮いたボールをバウンドさせずにダイレであんなに柔らかいボールを入れるなんて。あれを見てしまうと「やっぱり乾がいないとなぁ」と思ってしまうのも無理はないですよね。
6.まとめ
本当に厳しい試合でしたし、昨季の事がありますから、嬉しさもひとしおですよね。ただ例えばCKで3回危ない場面を作られたし、前述の大分、千葉、秋田との3連戦で一旦出来上がったチームのベースから戦い方の幅を広げていくという部分については持ち越しとなるなど、課題も多く残っています。9節にして首位に立ちましたが、やるべき事はたくさんありますから浮かれてはいられません。チームは今日(4/10)から練習を再開していますが、週末のアウェイでのいわき戦に向けて最善の準備をして欲しいです。
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