思い出の試合9(2016年10月2日 清水vsC大阪(ヤンマー長居))
えーと、今日は好評かどうかはわかりませんが続けている「思い出の試合」シリーズの9試合目、2016年のJ2で行われたC大阪戦について書きたいと思います。
前年不振にあえいだ結果クラブ史上初のJ2降格となったエスパルスは、昇格請負人の異名を持つ小林伸二氏を監督に迎えて1年でのJ1復帰を目指して戦いを始めました。最初の14試合はなかなかメンバーを固められず14節の段階では10位に甘んじていましたが、15節で河井、竹内をボランチに据えて8-0と群馬を粉砕したあたりから調子に乗り始め、17節で大前を怪我で失いながらも金子、北川がその穴を埋めて、テセを軸とした圧倒的な攻撃力で上位を猛追し始めます。が、取りこぼしも多く、1週間前に行われたアウェイでの松本戦では自慢の攻撃力を封じられて敗れ、自動昇格を果たすためには1つも負けられない状態となってしまいました。僕はその松本戦は観に行ったのですが敗れてしまい、この試合は非常に相性の悪い長居での試合だったので、家で観戦していました。
一方のC大阪戦はこの試合の前まで4連勝で3位に食い込んでいて、2位の松本とは勝ち点1差。エスパは松本と勝ち点7差の5位で、この試合を迎えます。
エスパルスのスタメンとベンチメンバーは以下の通りです。
GK 植草
DF 三浦、犬飼、角田、松原
MF 竹内、河井、石毛、白崎
FW チョン テセ、大前
SUB 杉山、ビョン ジュンボン、川口、本田、村田、金子、北川
前半立ち上がりはエスパがペースを掴みます。17節以来のスタメンとなった大前とテセの2トップに当てて、それを石毛、白崎がフォローして全体を押し上げるスタイルで何度か惜しい形を作ります。しかし個々の能力の高いC大阪も容易にゴールを許さず、25分過ぎからは両WBが高い位置をとってそれに伴ってエスパを押し込むようになり、オフサイドで取り消されるゴールシーンを作るなどチャンスを作ります。後半もC大阪がペースを握り続け、エスパも何とか凌いでいましたが、71分、右からのクロスに酒本が頭で合わせてC大阪が先制しました。ここで負けると自動昇格の望みがほぼ絶たれてしまうエスパは反転攻勢を仕掛け、1点を守る事を意識してC大阪が下がり始めた事もあって、C大阪を押し込むようになります。小林監督も80分に大前に代えて金子を投入し、86分にはボランチの河井に下げて北川をトップ下に入れて同点、逆転への執念を見せます。すると89分、竹内からのタテパスを3~4人に囲まれながら受けてターンした金子が、2人のCBが「門」となったところへスルーパス。そこに走りこんだ北川が冷静に流し込んで同点に追いつきます。これで再びC大阪が再び前に出ますが、90+4分、攻めあがった松原からのパスを北川がダイレでバックパス。これを受けた白崎がバイタルにいた金子にタテパスを入れて自らもスペースに侵入し、金子からのリターンパスを一閃。これがC大阪ゴールに突き刺さってエスパルスが逆転。その後の約1分程のアディショナルタイムを凌ぎ切ったエスパルスが見事な逆転勝利を飾りました。
以上が試合終了間際の勝ち越しゴールや逆転ゴールの多かった2016年シーズンの中でも印象深いC大阪戦の内容です。2016年シーズンは当然ながら初めてのJ2での戦いという事で、僕も初めて熊本とか札幌に行ったりして楽しい事もありましたが、やはり1年で昇格しないと分配金が減らされてクラブ経営上苦しい事になるのは明らかなので何とか1年で戻って欲しいと思っていたし、それだけに選手でもないのにプレッシャーも感じていました。特にこの試合の前に2位松本との直接対決に敗れてかなり厳しい立場に追い込まれていただけに、白崎のゴールの際は自宅ながら狂喜乱舞してました。この後エスパルスは残りの8試合を全勝して松本との勝ち点差7を追いついて得失点差で2位へ滑り込み、1年でのJ1復帰を果たすわけですが、そこへの勢いをつけたという意味で価値のある勝利だったと思います。
またこの試合を見返してもう1つ感じたのは、この2016年シーズンがJ1に復帰してからの3年間の戦い方のベースを作ったシーズンでもあったんだなという点です。この試合でも右で河井、三浦、石毛、左で竹内、松原、白崎がそれぞれトライアングルを作ってサイドを攻略したり、時にSHの石毛、白崎が中へ入ってサイドのスペースを空けたり2トップとの連携で中央を崩したりと多彩な攻めを見せていました。もちろんこの形はシーズン当初から出来ていたわけではなく、むしろ最初は個人に頼る部分が大きかったため札幌のような守備の固い相手には手も足も出ないような試合も見られました。それが怪我で出遅れたテセが復帰したり、14節で松原と白崎をスタメンに抜擢したり15節でボランチを河井と竹内のコンビに固定して、彼らが期待に応えてスタメンに定着し連携を深めていった結果、8月はアウェイでの札幌戦で2点ビハインドを1度は追いつく戦いを見せるなどして、終わってみればリーグ通算85得点というリーグ最強の攻撃力を持つに至ったわけです。その戦い方は特に2018年のヨンソン監督時代の戦い方に近いものがありました。
このチーム作りに大きな役割を果たしたのが小林伸二監督である事は言うまでもありません。ただ大分、山形、徳島を初のJ1昇格へ導いた手腕を買われて監督として招聘したものの、3チームとも守備に定評のある手堅いチームをする印象があったので、それに対して懐疑的な目を向ける人は多かったですよね。かくいう僕も「まあお手並み拝見かな」という感じでした。ただ大分と山形の間で指揮をとったC大阪では西澤、森島、古橋といったタレントを活かしたチーム作りをして2005年にはもう少しでリーグ優勝に導くところまでいっており、当時の左伴社長はその事も知っていたので招聘に至ったと仰っていた記憶があります。実際着任してからはとにかくサッカーが大好きな好々爺というキャラを前面に出して選手の心を掴み、自身の経験と海外の試合を見てブラッシュアップしていった指導方法を用いてチームを作り上げていきました。その意味では凄く柔軟性のある監督でしたよね。またウィキペディアでエスパの幹部の方が「勝負師というよりも教育者」と小林監督を評したと書かれていますが、それには全面的に同意しますね。小林監督の下で技術や才能はあるがそれをチームに還元しきれていなかった竹内、白崎、金子、犬飼、三浦などが主力として一本立ちしたし、当時2年目の松原、北川も大きく飛躍しましたよね。もちろん前年の田坂さんからの流れもありましたが。翌2017年シーズンはオフに大前と三浦が他クラブへ移籍し、代わりに獲得した選手も思うようにフィットさせる事が出来ずに苦しんで、何とかJ1に残留したものの小林監督はシーズン終了後に契約解除となりました。しかし小林さんが残した戦い方は2018年にヨンソン監督の下でバージョンアップされる事になったし、小林さんの下で飛躍した竹内、金子は今やチームの顔というべき存在です。その部分では小林さんには本当に感謝しているし、今季J2へ復帰した北九州でも頑張って欲しいですね。
一方で今年のエスパルスは2016年に作った選手間の連携を用いた崩しを大幅にバージョンアップさせた戦いを志向しています。再来週の再開後においてどんな戦いを見せるのか楽しみです。
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